二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: いろいろ長編集 【荊の森】 ( No.17 )
日時: 2011/01/24 06:07
名前: 薔薇結晶 (ID: 2nrfRM.C)
参照: http://blogs.yahoo.co.jp/gran_fenrir/1364107.html

◆ボールの向かう先◆

#01


<<ダンッ、ダンッ、ダンッ>>

一定のリズムである高校の体育館に響く音。
何の音だろうか。

茶髪の少女…いや、女性と言うべきなのか。
高校生の彼女はボールをついて、ゴールに向かっていた。
速いドリブルだ。

<<タンッ、バスッ>>

踏み込んで、レイアップ。
レイアップシュートの手本になるような美しいシュートだった。

続いて彼女はシュート練習を始めた。
ミドルシュートから、スリーポイントシュートまで。
さすがに男子選手のような身長も跳躍もない彼女は、ダンクは出来ない。

「いや、出来るわけないじゃん。」

ワンハンドシュートも出来ないのにさ、と彼女は呟いた。

※ワンハンドシュート・・・右手で打つシュートの事。左手はそえるだけ。

また、シュートを打ち始める。が。
着地の時だった。
脚が着地する場所に、ボールが転がっていたのだ。
其処に見事に踏み外し、

「うぉわっ!?」

<<ドテッ>>

見事なまでに転んだ。

「いったたた…。」

「はははははっ!」

と、体育館の入り口から声がしたのだ。
ハッと彼女は振り返った。
数人の男子だった。

「ちょっ、笑うのはヒドイよっ!!」

「ボール1個で練習したらそんな事なにはならないぞ。」

「うっさいっ!!」

いたたたた…と、尻をさする彼女。
どうやら尻餅をついた様子。
すると1人が体育館の隅の方に立てかけてあるモップに気が付いた。

「でもしっかりモップ掛けはしてるじゃないか。」

「当然。日課だし。」

「サンキュー、美音。」

美音、と呼ばれた彼女。
何を今更、と言い返す。

「よーしっ、練習やるぞ!!」

「今年こそ海南を倒す!」

海南、とは。
王者と呼ばれる神奈川屈指の名門校。

「気合入ってるね〜、健司も花形も。」

「当然だろ?今年が最後の夏だ。」

「インターハイ優勝が目標だからな!」

「…インターハイ、か…。」

懐かしそうに、美音は言った。
美音には、かつてインターハイでの苦い思い出があるのだ。
それは其処に居る男子も全員知っている悲劇。

「ホント、今年こそ優勝してよねっ、健司!」

「あぁ!当然だ。」

美音は実の兄、藤真健司にそう呼びかけた。

今日も、翔陽高校男子バスケ部の部活は始まった。