二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.3 )
日時: 2011/01/22 23:25
名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: 9MGH2cfM)

—第2章—『不幸の始まり』

—佐藤家の日々—

あれから1週間後、父と姉は俺と弟を親戚の佐藤家に預け、アメリカへと旅立った。

俺が住んでいた栄口家は、そのままの形で残っている。

「いらっしゃい。あ〜ら、大きくなったわね〜」
佐藤家のおばあさんは、そう言って、弟を可愛がった。

対して、俺には何も言わない。
弟ばかり可愛がるのだ。

何をするにも、俺はお兄さんだからといって、仕事をいっぱい頼まれる。

「ゆーとちゃん、おつかいに行ってきてちょうだい。」
「ゆーとちゃん、お茶の間掃除お願いね〜。」
「ゆーとちゃん、洗濯物とってきて。」

でも、まだ6歳の俺に、こんなに仕事をやらせて、できると思うか。
できるわけがないじゃないか。
失敗するのが当り前じゃないか。


そう、失敗するのが当り前なはずなのに…



《ガッシャーン》


俺は、食器洗い中に、手を滑らせ、皿を落として割ってしまったのだ。
しかも、それは、俺の小さいお茶碗だった。


「ゆーと!!!何をしているの!!!」
その音を聞いたおばあさんがやってきた。

「ご…ごめんなさ…い」
僕はそのおばあさんが、とても怖かった。
目に涙をためて謝った。

おばあさんは溜息をついて、
「…明日からゆーとのご飯なしよ」
と言った。

その言葉に俺は、一瞬世界が真っ暗になったような気分に包まれた。

「な…何で…」

「だって、それ、ゆーとのお茶碗でしょ?お茶碗がなきゃ、ご飯なんて食べられないわ」

俺は、その晩、自分の部屋で泣きまくった。

泣いても、泣いても、涙は止まらなかった。




ただ思った事が、
‘栄口家に戻りたい,
という事。






昔みたいに、楽しい日々はなくなっていた。


どうしておばあさんは、そんなに俺に酷いのか。
弟にはあんなに優しいのに。



そしてある日は、こんな事があった。

6月8日、俺の誕生日に、幼稚園の友達から沢山の手紙を貰って、弟に自慢していた時だ。

「にいたん、それ、ほちぃ」
弟は、その手紙に手を伸ばした。

「駄目だよ。これはゆーとのだもん」

「ほちぃ!」

「駄目だって!」

「ほちぃ」

「だーめ!」

そう言って、手紙を引っ張り合っていた。

その時、手紙が《ビリッ》と勢いのある音を出して、
ギザギザに破れた。

「…大事な…手紙が…」
僕は、めちゃくちゃになった手紙を見て、泣きたいというより、怒りの方が大きかった。

「バカ!!!何やってんだよー、もう…」

と大声を出した。

弟は当たり前のように、大泣きをした。

泣きだした弟を見て、ヤバいと思った俺は、必死で慰めようとした。




…その時、やってきたのだ。




「いい加減にしなさい!!!勇人!!!」
おばあさんは、やってきたのだ。


「…ちが…これは…」

その時、


《パァァ———ン》


おばあさんは、俺の頬をぶった。


「勇人は佐藤家にいらない。家から出ていきなさい…。」



あまりにも残酷な言葉で、あの時の記憶はほとんどない。



…ただ、俺は大きなリュックと、熊のぬいぐるみを抱えて、夜道を歩いていた。