二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナイレ 闇染まり〜吹雪の闇〜 ( No.194 )
日時: 2011/03/24 15:08
名前: 吹雪 (ID: nvLkUcGh)


『30』

 
 その夜・・・・


 「ふぁあ・・そろそろ寝るか」

 自分の部屋にいた円堂はひとつ大きなあくびをする。明日の試合が待ちきれなくて、いつまでもおきていたのだ。時計は12時半を指している。開いている窓からは涼しい夜風がはいってきている。空けていた窓を閉める。

 「ん?」

 円堂はカーテンを閉めている手をとめた。閉めた窓越しから見えるのは、外にいる染岡と吹雪だ。何か話しているのか?暗くてよく見えない。
 円堂はカーテンを閉めると玄関に向かった。

 
 2階の廊下の電気は眠りの妨げにならない最小限の明るさを保っている。静かだから他のメンバーは眠りについているのだろう。
 その廊下を静かに通るとしたへ降りた。
 下も同じぐらいの明るさだった。
 靴をはくと外にでた。
 
 ドアを開けるなり、ぶわっっと風が円堂の髪を揺らした。
 外は肌寒く、空は雲が覆い、時々雲の流れで月がみえる。
 宿舎の裏側へまわる。円堂の窓からみえる風景は裏なのだ。

 裏に一人ただずんでいたのは吹雪だった。
 星の見えない空を眺めていた。吹く風が吹雪の前髪を乱し、円堂からは表情は見えない。
 染岡はいない。入れ違いだろうか。

 
 「吹雪」

 「キャプテン・・」


 円堂の呼ぶ声に少し間があったが吹雪は答えた。




 「こんな時間に何しているんだ?」

 円堂が問うと吹雪はにこりと笑って返した。ふたりは近くの草むらに並んで座った。双方とも曇った空を意味無く眺める。


 「それはキャプテンも同じだよ。 僕はちょっと眠れなくて・・」
 「俺もさ。明日の試合楽しみでさ!」

 円堂が楽面でいうと、吹雪は顔を曇らせた。顔を腕にうずくめている。

 「そっか・・・明日エジプトとの練習試合だったね・・・」

 円堂にも感じた。試合に何かあったのか?
 
 「あ、ああ・・」

 それ以外返す言葉もなく、円堂は黙った。
 雲がどんどん流されていく。でも星も月もみえない。


 「キャプテン、知ってる?」
 「え・・何を?」

 顔を腕にうずくめたまま円堂に話す。

 「月はみずから輝いているんじゃなくて、太陽からの光を反射して光っているんだって」
 「え・・そ、そうなんだ・・・」

 唐突に話し出す吹雪になんて答えていいのかわからない。
 でもなんで月?太陽?

 「で、でもなんで?」

 円堂はいうと、吹雪は続ける。

 「だから太陽が消えたら月は真っ暗になる。闇のように・・」
 「・・・・」

 円堂は呆然と吹雪を見つめた。

 「変な話してごめんね、キャプテン」
 「いや、別に・・・・」
 
 吹雪は立ちあがった。

 「いつか・・話す・・・」
 「え?」
 「いつか話すから・・・」
 「吹雪・・・」

 短い言葉だったけど、話すといってくれた。いつか話すと。吹雪は空を見ると、微笑んだ。

 「星、見えてるね」

 空を見ると、雲の間から少しではあるが、星が、小さな星が見えていた。


 「じゃあ、僕はもう寝ようかな。お休み」
 「ああ、お休み・・・」

 吹雪は正面玄関への方向へ歩いていき、やがて建物の影で見えなくなった。
 吹雪に何があったのかわからない。けど円堂の不安はなくなっていた。

 「よしっ明日がんばるぞぉ!」