二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: デュラララ!!オリ小説  ( No.16 )
日時: 2011/02/06 00:55
名前: 五十嵐 ◆geiwiq3Neg (ID: ADUOsQyB)
参照: 椎羅⇔五十嵐






同時刻のとある喫茶店—————



そこでは、先程 智弥と話していた男が着ていた服を纏う女性が優雅に紅茶を口にしていた。
ただ、その女性の傍らにはその店の店長と金髪の男が腰かけていたのだが。
「————類」
と、先程から会話が途切れ続いていた沈黙を破ったのは、紅茶に手をつけていない金髪の男だった。
サングラス越しにその男が睨んでいるのは、正面にいる女性だ。
その類と呼ばれた女性は啜っていた紅茶をテーブルに置くと、その金髪の男を見て一言。

「何よ?シズちゃん」

「…いい加減よぉ、そのジャケット脱いでくれねぇか?類。アイツの顔がチラついてイライラすんだよ」
だが、そんな類…霧崎 類とは対照的に、イライラしつつ「シズちゃん」はそう言った。
…そのシズちゃんと呼ばれた男の服装は何故かバーテン服であるが、側にいる二人は大して気にも留めていない。

いや、むしろその服装である事が二人にとって…池袋に住む人たちにとってはありがたい事なのだろうが。


「…脱ぐのは嫌。だって脱いだら寒いじゃん?知っての通り、昔から冷え症なんだから許してよ。
 それに今、体調崩す訳にはいかない…私、仕事入ってるんだよね。———そういえばシズちゃん仕事は?」
「あー………アイツ見かけたから放り出しちまった。でも、大体は後輩に任せてある」
「後輩ねェ…」

世間話をしていた二人の聞き役となっていたその店の店長は、後輩というキーワードを聞いて口を開いた。

「最近シズちゃんとあの“姫義 葵”と一緒にいるのをよく見るけど、まさか後輩って———葵の事かぃ?」
「あぁ。仕事くれって泣き付いて来たもんでよ…最近またこの辺に戻ってきたらしい」
「あ、そう言えば葵…引っ越したんだっけ。戻って来たんだ」
「…」

シズちゃん…いや、平和島静雄はその言葉に答えなかった。
だが、何かを考える様に黙り込み、独り言に様にこう呟いた。


「葵…アイツは俺から見ても危ない」


「へぇ、ジスちゃんに言われたら相当だろうなァ」
「……、ゴメン私仕事あるから抜けるね?
 今日はありがと———シズちゃん、それに春君」

その呟きを聞いて、春と呼ばれた男…風月 春夜は感嘆の声を上げたが、類はそれには特に何も言わず、退席した。
そんな類に向かって気前良さそうにニコニコ笑いながら春夜は手を振るが、静雄はどこか気にくわないという風だった。
…よほど類の着ているその黒いコートが気に入らないのだろう。
類はニコっと妖艶の笑みを浮かべると、颯爽とその場を後にした。


「…さぁて、二人になったなぁ」

そして類が去った後も、二人はまだ世間話を続けた。

「で、最近仕事の方はどうだぃ?シズちゃん。取り立ても楽じゃないらしいじゃねーかぃ」
「いや、トムさんにも言った事はあるけど…まぁやりがいはある。
 ただ…取り立てても金出さねぇ輩にイライラさせられんのは変わりねぇけどな」
「ははぁー…そりゃあ大変だな。でも、今は後輩と上司の3人で仕事してるんだろ?」
「物覚えの悪い後輩持てば苦労するんだよ…」

静雄は特に怒りを見せない様子でそう言うが…春夜はそれを聞いて苦笑を浮かべた。
その話の様子だと…静雄をキレさせるのは日常茶飯事らしい。葵もよく身がもつなぁと感心を覚えるほどだ。

「…あ」

だが、その瞬間別にある事を思い出した。その春夜の声に、少し静雄は反応する。
そして二人の目線はゆっくりテーブルの上に降りて行き…紅茶の入っていないティーカップで目線が止まった。


「……類のヤロォ…金払ってねぇじゃねーかよ!!」
「…」

その悲痛の叫びにも似た声を上げて肩を落とす春夜を見て、静雄は珍しく同情の念を抱いたのだった。





「あ…お金払うの忘れてたわね。まぁいいや…ツケとこ。
 ———それより問題は葵…まさかもう戻って来てたなんてね」

一方喫茶店を後にした類は、眼つきを変えてポツリとそう呟いていた。
そして、携帯電話を開いて時間を確かめる。…午前10時57分。
まだ午前中であるが、彼女は今から大切な仕事がある。というのも————————

≪Purururururu…≫

突然響いた携帯電話のコール音…それはたった今類がある人物に電話をかけたからだ。
そして、電話の相手が出たのを耳にすると、類は不敵な笑みを浮かべてこう言った。

「もしもし、臨也?私だけど………えぇ、動いたわよ————————“black joker”がね。
 私は監視しておけばいいの?それとも…

 ——リーダーを始末した方が早いかしら?

 フフ、冗談よ…」
彼女の笑みは止まらなかった。
まるでその笑みは、楽しみを待ちきれない子供のような——— そんな笑みだった。


「———嗚呼…楽しいゲームの始まり、か…」


そして彼女は、呟く様に最後にこう言い…そのまま電話の電源を切ったのだった。