二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二世の契り】 ( No.19 )
日時: 2011/02/04 16:23
名前: 紫翼 (ID: DYIx383H)
参照: http://www.otomate.jp/nise/fd/



暗い表情の少女を元気づけるように、茶髪の少年は明るく言った。
「とりあえず自己紹介しようよ!俺は瑠璃丸って言うんだ。ほら、皆も。名前知らないままじゃ話しづらいだろ?」
興味深々の目で少女を見つめている。

そんな少年──瑠璃丸に、「落ち着けよ」とため息混じりに言ったあと、赤髪の男が口を開いた。
「俺は暁月。よろしくな。」
「・・・俺は秋夜だ。」
「私は翠炎といいます。」
「雅刀だ。」
それぞれが名乗る。

瑠璃丸が少女の顔を覗き込みながら、
「君は?」
と聞く。

少女は激痛に耐えながらも体を起こし、五人に深く頭を下げた。
「私に名はありません。助けていただいてありがとうございます、人間様。」

その言葉に暁月が不思議そうな顔をした。
「『人間様』って、お前も人間だろ?」
いいえ、と少女は軽く首を振った。
暁月ばかりでなく、他の四人も同様の表情をうかべる。

少女は、
「これから起こる事、驚かないで下さい。」
と言うと、目を閉じた。

すると少女の体が輝きだし、白い光に覆われていく。
その光が収まると、そこに少女の姿はなく代わりに白い狼が座っていた。
「なっっ・・・!?」
驚くなと言われても、この突然のことに五人は驚く以外の方法が無かった。

次の瞬間には、少女の姿に戻っている。
「どっ・・・どういうことだ・・・!?」
驚愕の目で自分を見る五人に、少女は己の正体を明かした。

「私は白狼。今までは術を使い、人間の姿になっていましたが・・・さっきのが本来の姿です。」

翠炎が苦笑する。
「白い狼は神の遣いと言われ、数々の術を駆使し決して人間の前に姿を現さないと書物に書かれていましたが・・・本当のようですね。」
少女の目にも苦笑が浮かんだ。
「私達は神の遣いなどでは御座いません。人間の前に姿を現さないのも、我々が希少な種だからでしょう。」

誰もが信じられないといった顔をしている。

暁月が、
「と・・・とりあえず、御屋形様に報告しといた方がいいよな?」
と言うのと、襖が開き弥太郎が
「軒猿、御屋形様がお呼びだ。」
と言うのとが同時だった。