二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ONE PIECE】 光の軌跡、双子の奇跡 ( No.45 )
- 日時: 2011/02/13 11:51
- 名前: 右左 (ID: 8hgpVngW)
- 参照: 左手が負傷して動かないと右手も動きにくくなった、どゆこと←
<<эпизод 7>>
-新しい仲間-
ユーマはベッドの上でナミがタンスから取った服に着替えていた。
それによって生まれた変化は、汚れたTシャツが真っ白になったくらいなのだが。
「あの子、リナリアを父親と言ったわね。 道理で愛想がないと思ったわ」
「俺だって、あの男の何処がいいのかなんて知りません。 俺もリナリアが嫌いですから」
ゾロがユーマを見る。
それから少し俯き加減に顔を傾けて、喋り出した。
「てめえらに何があった。 嫌いになるほどの、それなりの理由があんだろ」
「ええ、ありますね。 完結に言うと、俺らはリナリアに“虐待されていた”。 そんな所です」
一味全員が驚愕の表情を浮かべた。
虐待されていたのに、好いているのはおかしい。
だが“無情”への依存的な愛は、トーマが愛しているユーマよりも大きいのだ。
好いている以外のどんな感情が、彼女にあるというのだ。
「リナリアが偶に航海から帰ってきて、俺らを殴ったりして。 トーマは怯えてたんですよ。 なのに、それなのに」
「そらぁ、おかしい話だな」
サンジが煙草に火をつけながら言う。
「そこで、貴方達にお願いがあるんです」
ユーマがにこりと微笑みながら、言った。
ルフィは負けず劣らず太陽のような笑みを浮かべて言い返す。
「にししっ、で、俺達に得はあんのか!」
「ありますよ。 それで、頼みと言うのはですね——————」
***
トーマは浜辺に座っていた。
ただ何もせず、じっとしているだけだ。
少し離れた所に彼らの、麦わらの一味の船が見える。
彼ら一人一人のシルエットは分からないが、全員乗り込んでいる事は確信している。
「トーマ」
後ろから声が聞こえる。
トーマには声の正体が分かっているので、振り向きもせず、動じもしなかった。
ただ、波の不規則な流れを見ていた。
「何」
一言、素っ気無く返事をした。
喜びも、怒りも、哀れみも、楽しさも感じられない抑揚のない声で、言った。
彼女と同じ顔をした双子の弟、ユーマは苦笑いをして話し始める。
「俺、あの人達についていく事にします」
ユーマの決意が、見えずとも分かった。
長年連れ添った双子の片割れの事だ、その言葉を聞かなくても分かる。
「勝手にすれば」
以前の彼女達からは想像も出来ない淡々とした会話だった。
「では、行きますね」
トーマは頷きもしなかったが、ユーマは困ったように笑ってルフィ達の船へと進んでいった。
トーマは最後までユーマを見ようとしなかった。
見てしまったら、
涙が出るかもしれないから。
ユーマを、縛り続けてしまうから。
姉として、これぐらいのわがままは聞いてあげたかったから。
例え、父親に背こうとも。
そんな時に、声が聞こえた。
遠くからなのにまるで近くで叫ばれたような大きな声が。
「よっしゃーッ!! 新しい仲間二人加わったぞぉー!!」
・・
新しい仲間、二人。
「……ふ、たり??」
トーマが船の方向を見ると、ルフィの腕がだんだん近くになってきている。
そして、目の前まで伸びてきた腕を見ると、何かが書いてあった。
「“俺の仲間になれ!!”」
読んだのと、叫んだのと。 二つが重なった。
トーマの瞳からは、うっすらと涙が。
「アタシは……っ、海賊の仲間になんか……!」
「トーマ!」
船の中から誰かが、いや、ユーマが手を振っている。
ルフィの腕が、トーマを抱き上げた。
「変な意地を張らなくても、いいんですよ!! 来たいんでしょう??」
トーマはルフィの腕の中で暴れるが、ルフィがガッチリ押さえているので抜けられない。
「意地、なんか張ってな」「大丈夫です」
ルフィの腕が元に戻った。
ルフィはトーマをゆっくりと下に下ろした。
「さあ、一言でいいんです。 トーマの言ってみてください、本心を」
トーマは涙を拭って、小さく笑みを浮かべた。
ルフィも、ゾロも、ナミも、ウソップも、サンジも、ユーマも。
皆にっこりと笑って。
「アタシを、仲間に入れて!」
ユーマがトーマを立ち上がらせて、ルフィが叫ぶ。
「よし!! 出航だぁ!!」
「「「「「「おう!」」」」」」