二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜更新休み(来週水曜まで)〜 ( No.228 )
- 日時: 2011/05/17 18:13
- 名前: 桜花火 (ID: /HyWNmZ0)
50 憎悪の欠片
冬『夏未!!!』
冬花が叫んだのとほぼ同時に、夏未の背中から炎の翼が消え、上空から墜ちて行った
フェニックスの炎も静まりかえる
茜「なっちゃん!!」
春「もう無駄よ、死んだわ…さぁ、次はそこのもう一人の私かな?」
リ「茜、今は落ち着け!!円堂たちを守るのが第一だ!」
春「守っても無駄よ。この世界に来たのが間違えだったわね、元の世界でのんきに球遊びでもしてればよかったのに、恨むならそこにいるお姫様にしてね」
春奈が円堂たちに向かってまるで罪がないかのように笑いかける
そして、手を上にあげ、矢の発射準備に取り掛かった
このまま何もできずに殺されるのか、元の世界にも帰れないで、世界一の夢も無くなって、本当に終わるのか、悔しさのあまり円堂は強く唇をかんだ、口の中に鉄の味が拡がる
そんな円堂を豪炎寺たちは同じ気持ちで見つめていた
円「っ……!」
冬『待って!』
『冬花』が突然立ち上がった
リ「姫…?」
春「いまさら誤っても無駄よ?」
冬『円堂くんたちは悪くない…悪いのは全部私!』
円「冬花?」
冬『殺すなら私だけにして!』
両手を力いっぱい広げ、自ら敵の的になる
春奈は『冬花』 のとった行動に驚きの表情を見せた
一瞬自分の兄の姿と、冬花が重なったようにも見え、それをすぐに振り払い、頭の中の幻影を消し去った
春「!?」
茜「姫、お下がりください!!」
茜が冬花を抑えようとするが、冬花はそれをほどく
下を向きつつも、広げていた手を下ろそうとはしなかった
それどころか、もっと力強く踏ん張った
冬『これで、貴女たちの気が済むなら私は死んでも構わない!!』
顔を上げた『冬花』の頬には涙が伝っている
本当は怖い
体が震えている、立つのもやっと
それでも、この一つの命が消えれば、皆が救われるのなら、あの子たちの笑顔がまた戻るのなら、喜んで身を投げよう
そう心の中で自分に語りかけていた
ただ、もう一度あの子たちと馬鹿騒ぎするのができなくなると思うと、心が切なさで締め付けられた
それにもう一つ心残りもある
こんなことなら、自分の気持ちに早く気が付くべきであった
いまさら後悔しても遅いだろうが
冬『私のお父様が皆に酷いことをしたなら、私がその罪を償う!!』
夏「ふざけるな!!どうして自分の父親のために、こいつ等の復讐のために貴女を一人に死なせるものですか!!私はまだ戦える!!」
冬『夏未…』
春奈の背後から、夏未が自分の刀を杖代わりにして立ち上がった
髪を束ねていた飾りが壊れ、長い髪が垂れ落ち、その隙間から赤い瞳が春奈を睨みつけていた
『冬花』は夏未が立ち上がるのを見ると、全身の力が抜け、地面に座り込んだ
それをリュウジがやさしく受け止める
春奈は手を下ろし俯いていた
顔の表情は確認できないが、動揺しているのは誰にでもわかる
春「……」
ア「早く始末してください」
耳に着けてある小さなイヤホンからアルティスの声が届いた
通信機代わりに常につけてある携帯用品だ
ジリジリと音を立てつつも、きちんと声は届いていた
その声で春奈は我に戻る
春「!…うるさい、分かってる」
夏「あんたの相手は私だ!!」
不死鳥がもう一度よみがえった
炎が舞い上がり、辺りを紅蓮の炎で包み込む
炎の羽が元に戻り、上空にいる春奈の傍まで、夏未を導く
ちょうど春奈はもう一度手を挙げ、いまにでも円堂たちに攻撃を仕掛けるところだった
水で作られた矢はもう準備が万全、いつでも円堂たちの胸を突き刺せる
しかし、春奈はなかなか動かない
攻撃を仕掛けるために手を振り下ろす訳でもなく、そのままの体制で止まっていた、顔もいまだに伏せている
異変を感じるが、夏未は躊躇することなく、春奈の背後を切りつけた
自分が気づいたときはもう動けなく体が地面に向かっていた
水の竜も安らかに眠るように消えて行った
そのとき、もう一度兄の姿が瞳に写しだされた
とても優しく微笑んでいた、自分はそんな兄が大好きだった
だからこそ、いなくなったときは寂しくて苦しくて一人ぼっちだった
そんな自分に手を差し伸べてくれたのは姫だったのに、どうして復讐なんかしようと思ったのだろう
アルティスから事実を知ったとき、心の底から憎悪が湧いてきた
きっと、修也や秋も同じだろう、真実を知った後、石を素直に受け入れていた光景をはっきりと覚えている、しかし、少しだけ悔しそうな表情も見せていた
どうして守は最後まで拒み続けたのに、自分は拒むことができなかったのだろう
その後、自分は憎悪で心を歪まされ支配された
アルティスの思うままに動かせられ、町を壊し、人々に恐怖を与えた
すべてあの姫に復讐するために
でも、今の心はなぜか穏やかだった
憎悪の欠片などひとつも残っていない
春(ごめんね、お兄ちゃん、姫…復讐なんかの道を選んで………)
心の中の黒い気持ちが消えていくと同時に、胸のペンダントが粉々になり消え去った