二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 〜アニメ、ネタバレ投稿!!〜 ( No.346 )
日時: 2011/06/14 21:49
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

10 義姉の存在

一方、夏未たちはというと—

「ここぐらいしかないよ。タイヤで練習できる場所なんて」
「ありがとう。ここなら円堂くんも練習がはかどると思うわ」

雷門と夏未は円堂がタイヤの特訓ができるような場所を探していた。
そこで見つけたのが、城下町の少し外れた場所、草木の茂った林に来ていた。ここなら、誰の邪魔にもならず、それに魔物も出現することはないので、夏未は絶好な場所だと思ったのだ。それに見渡しもよく、大声で叫べば誰にでもわかる。もう小学生ではないので、そんなことはしないだろうが。

「にしても、よくタイヤで練習するなんて考えたね」
「円堂くんは宇宙一のサッカーバカですもの」
「ハハッ、サッカーバカか……昔も私たちはそうだったのかな〜」

夏未が目の前に立っている木の幹を触った。大きくそしてとても丈夫そうな樹木だ。簡単には折れたりはしないだろう。その面でもキーパー練習に役立つかもしれない。

「ずっと、気になっていたことがあるの…どうして貴女はサッカーをやらなくなったのかしら?」
「忙しいのは本当のこと…」
「それだけではないでしょ?」
「うん……でも、言わなきゃダメかな?」

雷門は夏未の瞳に映った辛そうな表情を見ると、無理に聞こうとは思わなかった。

「別に言いたくなかったら結構よ」
「言える時が来たら言うよ。どうせ帰るまでまだまだ時間がありそうだしね」
「でも、これだけは教えてくれる?貴女が言ってた姉さんって誰のこと?」
「う〜ん、君が言ってた、『瞳子』だよ」
「そ、そうだったの…」

瞳子、過去の監督の名前が出てきたことには少し驚いたが、ここは異世界—パラレルワールドなのだ、瞳子がいても不自然な話ではない。

「戸惑うかと思って言わなかったの、ごめんなさいね」
「謝る必要はないわ。それと、貴女と瞳子さんの関係が知りたい…」
「グイグイ来るねぇ〜」
「貴女たちは私たちのことを知っているわ。だから、私たちも知る権利はあるはずよ」
「知っててどうするの?君たちが手助けできるとでも?」

夏未が雷門の方へ振り返った。

「そんなの私にだって分からない…でも、円堂くんたちなら少しでも役にたつかもしれない」
「本当に円堂くんが好きなのね、君は」
「な、なんでそんなことになるのよ!!///」

夏未が不意打ちをつくように言うと、雷門はすぐに顔を真っ赤にさせて怒鳴った。

「だってぇ、ずっと円堂くんのことばっかじゃない」
「わ、私は、彼がき、キャプテンとして皆をまとめられてるのに感心しているだけよ!///」
「ごめん、ごめん。まさかそんな反応するとは思わなかったから、もう怒鳴らないで」

夏未が左手を上下に振り、適当に謝った。

「それより!さっきの話よ!///」

雷門はどうにか話をそらそうと、抵抗した。
そろそろからかわれている雷門がかわいそうになってきて、罪悪感を感じたため、彼女のためにも話をそらすことに乗った。

「簡単に言うと、姉さんが私たち五人を助けたの。最初は私で春奈、修也、秋、守の順番で姉さんに拾われた。私たちは孤児だからね」
「具体的にはどういう人だったの?」
「優しい人だった、守も修也も姉さんをすごく慕ってたの。でも体術や剣術の修行のときはものすごく厳しかったな〜」
「強い人だったのね」
「うん、当たり前よ。だって『五賢者』のひとりだもん」
「五賢者?」

雷門が聞き返した。
夏未が言うには、通常、この世界では魔力の種類は最大でも二つなのだが、五賢者はすべての魔力を持ち、すべてを意のままに操ることできる。そして、特殊な魔力も備えてあり、その魔力は五人全員異なっている。たとえば、瞳子が持っているのは月の魔力、そしてその魔力はほかの者は誰一人と持っていない、いわばこの世界でただ一つの魔力なのだ。今判明されているのは、瞳子を入れて二人らしい。

「そんなに強いなら、どうして……」
「私たちにも分からない…ある日突然いなくなったの、ずっと探したけど見つからなくてね…最初はもう亡くなったんじゃないかと思った……でも…」
「でも…?」
「時々手紙が来るの…それも姉さんの書いた字…」
「そう…」

夏未の言葉に、雷門は一人の老人を思い浮かべた。円堂守の祖父——円堂大介だ。彼もここの瞳子と同様に、円堂に突然手紙を出し、イナズマジャパンのメンバーは少し混乱したらしい、と話に聞いていた。もしかすると、ここの瞳子は大介に似ているのかもしれない。性格まで似てしまったら、イメージが壊れてしまうので、考えるのはやめておこう。

「姉さんは一体どこにいるんだろうね……」
「手紙が来たなら生きているのではなくて?」
「うん…そうかもね…でも、生きてるなら、どうして戻ってこないんだろう…逃げる、としても私たちや姫を置いていくなんて考えられないし…」
「……」
「さっ、帰りましょ!円堂くんたちもそろそろ帰ってるだろうし。あっ、この話別に隠さなくてもいいよ〜、言いたいなら言っても構わないけどぉ。今度機会があったら、円堂くん達も集めて、皆の昔話とかしようよ」
「え、えぇ…」

夏未が歩き出すと、雷門はもう一度あの大きな木を見上げると、夏未について行った。大きな木は、二人の影をジッと見つめるかのように聳え立っている。