二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 アンケート参加してください! ( No.364 )
日時: 2011/06/16 22:01
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

12 予言者

「今回の依頼結果なんですが…」

立つその勇ましい姿は少年のようだった。しかし、この子は少年ではない、れっきとした少女なのだ。ただ少し、言葉遣いが悪いだけ。少し、顔立ちが少年みたいなだけなのだ。
少女の名は—飛火炎愁。日本刀を華麗に使う王国の剣士だ。
炎愁の前には大きな椅子に座っている、この国の王—嵐。そして、神官の悠也。炎愁は依頼の報告に来ていたのだ。
通常、一般の依頼なのであれば、報告は依頼者だけになる。だが、その依頼が王族からだと話も変わってくる。今回の件はそれほど重要なことなのだ。

「国の東に位置する、レクレット森林なのですが……出現するはずのない魔物がたくさんいました。それも数えきれないほど…」
「やはりな…ガキたちが捕まった頃と時期が大体同じ……」
「はい、幸いレベルが一などの雑魚モンスターばかりでしたが…」
「異常事態は変わらない、か…」

嵐は手を顎に当て、今の状況を整理した。
まず、異変が起きたのがちょうど五か月前。国の周辺に潜む魔物たちの動向が変わりつつたった。海の近くで生息する魔物が森に出てきたり、熱帯地域にいるはずである魔物が寒帯地域に現れたりするのだ。その直後、アルティスと隕石—エイリア石がこの国に出現した。嵐は、やはりすべてはあの石の力のせいなのではないかと考えている。それは悠也も同じ考えだった。

「王、やはりあの隕石の仕業なのでは…」
「あぁ、それしか考えられないな…それで、飛火、ほかには何かあったか?」
「はい、例の新種の魔物が出現しました。それにより…」

炎愁はマントで隠されている右腕をあらわにした。
そこには大きな獣の爪に引っかかれた跡がくっきり写っている。とても痛そうだ。嵐と悠也は怪我のひどさに、一瞬眉間に皺をよせた。

「お前ほどの剣士でもこうなるのか…」
「いいえ、俺が相手をなめていた結果です。夏未や鈴ならすぐに仕留めていたはずです」
「新種…一度、夏未さんに頼みますか?飛導さんはまだ帰ってくるには結構かかると思いますが…」
「いや、夏未は護衛の仕事がある。それに最高ランクの奴は一人くらい、国においておいた方がいいだろう」
「でしたら守さん達もダメですね…ヒロトさん達も次の国へ行きましたし…」
「王、美麗はどうでしょうか?彼女は氷の魔法を使います。新種の魔物は地の属性…もしかしたら、倒せるかもしれません」

炎愁が提案した。

「波風か…アイツは今どこにいる?」
「明日くらいには国に帰還するかと…」
「そうか、明日波風が帰ってきたら、すぐにここに連れて来い」
「はっ」

嵐が命令すると、炎愁は深く頭を下げ、王宮の間を後にした。

「魔光石もなくなるし、魔物の動向もおかしくなってる…どうなるんだろうねこの国は…」
「……」

悠也の問いに、嵐は返すことができなかった。







「新種……守たちが聞いたらどうなるだろう…」

炎愁が小さく呟いた。

「人のうわさ話か?」

廊下の向こう側から歩いてきたのは、修也だ。少し機嫌が悪いのか、声が低くなっている。元から低いので、分かりづらいのだが。

「護衛の仕事はどうした?」
「俺は城にいる奴の担当だ」
「姫の傍にいられなくて、拗ねてるのか?」
「拗ねてる暇なんてあるなら、護衛なんてやらねぇよ」
「俺も手伝おうか?どうせこの後三日ぐらいは暇だしな…」

炎愁は真っ白な天井を見上げながら言った。

「結構だ、人手は十分足りてる」
「そうか…」

炎愁は壁から離れると、修也が来た方向とは反対の方に歩き出した。

「つまらなそうだな」
「まぁ、適当に時間つぶしておく」

そういうと、角を曲がった。城を出る時のルートだ。
やがて、炎愁の足音が聞こえなくなると、修也も元の場所に戻ろうとした。
その時だった、一人、彼の背後にいきなり現れたのだ。

「っ…!!!」

修也急いで剣を抜き、構えた。青年に見える人物はフードをかぶり、顔が見えない。いかにも怪しい人物だ。
修也の警戒心はますます強くなる。握っている剣にさらに力を入れる。

「誰だ!?」
「……マコウセキ、スベテノハジマリ…イケニエノタミ…」
「お前!!何を知っている!?」

修也が叫んでも、相手は微動だにしない。まるで人形のようだ。ずっと人差し指で修也を指すだけ、声もロボットのように感情が入っていない。冷たい視線を彼(?)から感じる。

「ヨゲンシャ、マリョクノウツワ、フユカヒメ、ゴケンジャ、マコウセキ、エンドウマモル」
「えん、どう…だと?」


青年は次々に訳のわからない単語を言っている。それが何を示しているのが修也にはさっぱり分からなかった。

「ヨゲンハツタエタ」

そして、青年の体に青白い炎が竜巻のように包み込むと、青年は消えてしまった。
最後に残っていたのは、青年が被っていたフードと青白い砂だけ。

「茜が言っているのと似ているな…」

修也はフードを拾い上げた。
フードの内側には「The prophet」と天を駆けるペガサスに星の印が刻まれている。

「予言者……それにこのペガサスはどういう意味だ?」

フェアリー王国の謎はいまだに包まれたままだ。