二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜波風美麗(少しだけ)登場!〜 ( No.450 )
- 日時: 2011/07/23 20:41
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
21 変わり果てる姿
※音無さん、キャラ崩壊
「アハハハ、本当だ!何にも感じない!痛くなんかない!!」
「は、るな?」
不気味な笑い声をあげながら、春奈は水の剣でチェルタを何度も何度も斬りつけている。背後から攻撃を受けているのにもかかわらず、防ごうとも思っていない。今ここにいる春奈はもう『別人』だった。いや、人ではない。あえて言うなら——悪魔。
「そうだよ、あの石なんかなくても、私はこんな力を持ってたんだ!アハハッ、これなら負ける気がしない…」
《そうだ、貴様はもっと力を引き出せる》
あの声の主は、春奈の体に潜む青き龍。竜は春奈に悪魔の呪文をかける。
顔や腕など、見えているところには黒い帯のようなあざが二本も三本も春奈の体に巻き付いているかのように現れた。
「テメェ!!そんな力どこから!?」
「うるさいなぁ〜今度はお前の番だよ?怖くなったぁ〜?」
「おい、アイツ…一体どうしたんだよ!?」
小暮が問うても、誰も答えない。当たり前だ、ここにいる者の中で誰もその答えは分からないのだから。
「どうやって殺そうかな〜?最初はその邪魔な腕からにしよっ!!!」
「なめんな!!」
チェルトが獅子の腕を振り上げた瞬間、腕は空中を舞い、地面に落ちて行った。
「なん……だと!?」
「次は足!」
春奈はもうほとんど動くこともできないチェルタにどんどん攻撃を仕掛ける。両腕、左足、右足…最後には少しずつ骨をバキバキと音を立て砕いている。
チェルタはもう声を張り上げることも、動くこともなかった。
「アッハハッ、弱い弱い弱いっ!!ハハハッ」
「もうやめろ!!もう相手は死んでる!!」
円堂が叫んでも聞こえてはいない。まるで誰かに呪われているかのように、ひたすら死体となったチェルタの体をギタギタにしている。攻撃はすればするほど、威力を増しているのがわかる。血が全面に飛び散り、顔や体に付着する。その血が春奈を一層化け物のように引き立てていた。
「逆らうから悪いのよ!!私を殺すなんて無理なんだよ!!」
「春奈!!」
もう一人の自分に対して叫ぶ。この水のガードがある限り、円堂たちは春奈に近寄れない。
音無はその場にペタンと座り込み、その光景を見ていた。
フェアリー王国に来て会ったときは、いきなり抱きついて来たり、話しかけられたり、いろいろ大変だったけど、しつこいとか嫌いとか、マイナスの面は全く感じなかった。それよりも、楽しい人だ、と思える人だったはずだ。
その人が今、顔を悪魔が微笑むような怖い笑みに、何度も人を斬りつけている行動、それに自分では痛くないと叫んでいるが、実際にはとても痛そうに見える。事実、本当はとてつもなく痛い。ただ心の感情が春奈自身を変えてしまっている。その様子を涙ながら見つめていた。自分は何もできずに。
「やめて…お願いだから…」
「ねぇ?もっと楽しませてよ…まだ生きてるんでしょ?アッハハ!!」
高笑いの声で音無の小さく脆い声は春奈の耳には届かない。
「フッハハハッ、皆消えちゃえばいいんだよ。こんな世界なんか、誰も幸せになんかなれない!」
「もうやめてっ!!!」
音無が立ち上がり、春奈の方へ走り出した。水のベールが道を塞いであるはずなのに、体がそれをすり抜けた。
「春奈!!」
飛び出す妹を止めようと、手を伸ばす。しかし、鬼道の手はベールに触れると、それ以上は進まなかった。
体がすり抜けたことに関心を持っている場合ではない。一刻も早く目の前にいるもう一人の自分を止めたかった。涙を流しながら、背後から彼女に抱きつく。春奈の手は振り上げた状態で静止した。
「お願い…もうやめて…」
「!?」
「辛いよね…苦しいよね…誰かを守るって…」
春奈の背中に自分の顔を押し付け、涙を押し殺しながら、弱々しい声で訴えるように話した。
「貴女の受けた心の傷はいくら私でも分からない…同じ存在でも…どんなに苦しかったのか、どんなに悲しかったのか…」
一瞬春奈の体がビクッと動いたが、それでも話を続ける。
「でも、この世界で幸せになれないなんて、そんなこと絶対にない…だって、貴女だっていつも見てるでしょ?町の皆の笑顔とか、もう一人の冬花さんの気持ち…分からないの?あの人はいつも貴女たちを見ているときいつも幸せそうに笑ってるじゃない…殺し合いの世界かもしれない…残酷の世界なのかもしれない…私の世界よりずっとずっと怖い…それでも、その中には希望があるじゃない…」
「離せ…」
「離さない!!貴女の心が落ち着くまで、私は絶対に離さない!!ねっ、お願いだから…もう…」
「音無!!」
円堂たちの声が張り上げた。
背後からそっと忍び寄る剣が、ちょうど音無と春奈の胸のあたりに狙いを定めている。当たれば急所、二人とも一辺に死んでしまう。
「春奈!!」
「大丈夫…怖くなんかない…一緒に—
いてあげるから…」
蛇の剣(つるぎ)が二人に突き刺さる。