二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集中!!!〜 ( No.502 )
日時: 2011/08/15 19:22
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

33 一度に懸けた勝負

「ルールは簡単…と言いたいところだけど、守の頭で理解できるか心配だからもう一度説明するね」
「馬鹿にすんな!!」

夏未と円堂のしつこさに負け、守はサッカーをやることになった。
勝負のルールは簡単だ。ゴール前には同じく円堂、その前には風丸や吹雪といったDFやMFたちが阻む道を通り、円堂に向かってシュートを撃つ。入っても入らなくても一本だけ。だが、円堂と夏未はその一本に懸け、守を除縛から解放させようと考えているのだ。
春奈や修也たちはつまんなそうに見ている。秋はもちろんの事、本の世界。

「一本だけな……」
「あぁ!来い!!」

円堂が両手を叩いたのを合図に、守は走り出した。

「もう一人の円堂の力、見せてもらおう!」
(だるい…)

FWである豪炎寺や虎丸が二人係でスライディングを仕掛けてくるが、軽くジャンプし避けた。直地点にはすぐに鬼道が待ち構えていた。
鬼道がボールを取ろうと、足を出すが、守はそれに合わせて、後退したり前進したり、彼とはいい勝負いだが、すぐにまた守が回避をする。

(本当にこれで代表かよ…)

今度は小さな体を活かしてすばっしっこい小暮とチーム内では吹雪とトップを争う速さの風丸。どちらも厄介な人だが、守にとって何の苦にもならない。
ポケットに両手を入れているが、ボールを蹴りあげ、華麗に一回転をして、背後でボールを足でみごとにキャッチをする。

「スノーエンジェル」

吹雪の氷が守を包み込んだ、これでおしまいかとかと思われたが、氷は綺麗に割れ、空中でダイヤモンドダストのように儚く消えた。

「お前ら、本気出してるのか?」
「んだと!?」

守の挑発に乗ったのが染岡だった。まだ守や冬花を敵視している一人でもあった。

「ハァ…一気に片づけるぞ」
「本気で来い!!」

目を瞑り、意識と力のすべてを右足に託す。周りにだんだんと稲妻が纏わり、周囲に火花を散らす。これはシュート技ではない、守は魔術を使おうとしている。

「本気で来い、と言ったよな?それを後悔させてやる」
「後悔なんてしない!ぜってぇ止めてみせる!!」

守の目があの狼の瞳へと変化した。目つきが鋭くなり、視線は見られてだけで体に穴が開きそうだ。
右足でボールを空中へ蹴り上げた、その直後に大きくジャンプし、ボールを上から踵落としを繰り出し、地面すれすれまで落ちていくと方向転換し、円堂へと向かった。嵐の中の荒れている雷を纏って。

「ゴットキャッチ!!」
「なっ、あれはまだ完成してないでしょ!?あのままじゃ…!」
「……守のシュートをまともに食らったら、立てなくなる…脚力が強いから…」

秋が冷静に分析したが、今はそれどころではない、円堂がゴットキャッチを完成しなければ、守のシュートを受け、倒れてしまう。しかも、普通のシュート技ではない、魔術だ。普通の人間が撃てるようなものと力が遥かに違う。

「大好きなものから目をそらすんじゃねぇ!!」
「っ!!」

まただ。あの感覚が体中を巡った。円堂の言葉が昔の記憶を呼び戻す。サッカーと向き合っていた頃の記憶、あの少年が与えてくれた暖かな場所、サッカーが大好きだった自分。


《サッカーやろうぜ!守!!》


——郁斗、いいのか?また俺があの場所に戻って……。正直言うとまだ怖い。サッカーと向き合えるのか、サッカーを受け止められるのか……。

「止めてみせる!!」

背後の魔人はだんだんとその姿を現し、迫りくる守のシュートを受け止めた。今回は消えなかった、消滅したのはボールが帯びていた雷——つまり

「やった!!成功したぞ!!!」
「止められた!?」

ゴットキャッチが成功し、喜びの感嘆をあげているイナズマジャパンのメンバー、しかし、修也や夏未たちは驚いていた。脚力で言えば、守は夏未を上回るほどの力の持ち主、彼が本気を出して蹴ったボールを円堂は受け止めたのだ。普通の人ならば大惨事になることだ。

「……こう考えると、円堂が魔法を使えたら、守も夏未も超えるかと思われ」
「止めちゃったぁ〜すごいね〜」
「このチームの自慢の選手だよ。キャプテンは」

音無が誇らしげに胸を張った。静かに着陸した守は、背中を叩かれたり、褒められたりして、嬉しそうにしている円堂を見つめた。

「止められたな、守」
「さっき、郁斗の声が聞こえたんだ…嬉しそうに笑ってたよ…今のあいつ等みたいに」
「で、どうするの?サッカー、やる?」

期待している答えが返ってくるだろうと思い、夏未はまたあの質問をした。しかし、答えは変わらなかった。

「いや、約束は約束だ。一本だけやると言ったんだ。やらない」
「えっ!それはないよ〜」

せっかくサッカーを再開させる最後の頼み綱でさえも途絶えてしまい、さすがに夏未でも肩を落とした。だが、守の顔を見ると、彼はどこか穏やかな表情をしていた。今はやらないかもしれない、それでも、今後また彼が一歩進むことがあるだろうと信じている。

(まっ、一件落着かな?)

守の視線に気づいた円堂は、ニッと笑いながらガッツポーズをした。それに対しても、守はただ苦笑いをするだけだった。





「よし、円堂。もう一度ゴットキャッチをやってみろ」
「おう!任せとけ!!」

鬼道にも合図を送ると、彼に応えるように、鬼道もコクンと小さくうなずいた。

「「「グランドファイヤ!!」」」
「ゴットキャッチ!!」

虎丸、豪炎寺、ヒロトのシュートを受け止めるため、新たに身に着けた必殺技を繰り出す、が、シュートを受ける前に魔人は消え去り、ボールは円堂の顔面にみごとヒットした。

「「「えっ?」」」

皆が疑問を浮かべるのは当たり前だ。今さっき成功したはずのゴットキャッチができなくなってしまっている。

「円堂、これはどういうことだ?」
「俺、さっきできたのに…」
「火事場の馬鹿力ってことかな?あれは」
「さっきのはまぐれかよ〜」

円堂も泣き出しそうだ。鬼道に助けを求めるが、彼も何がどうなっているか分からない。
一度は完成したゴットキャッチ、円堂はいつになったら本当に使えるようになるのだろうか。