二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集中!!!〜 ( No.518 )
- 日時: 2011/08/20 19:43
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
- 参照: Dr.クロへ:月実ちゃん、やっとでました…待たせてごめんなさいorz
36 瞳の十字架
「美麗ッ!!!!!」
「——っ!!」
とっさの判断で、氷の鎌を両手で掲げ攻撃を受け止めた。力がとても大きい、これでは一分も保つことができないだろう。
重さで両足が地面にめりこんでいる。
だめだ、重すぎる———!
「世話が焼けますね…」
黒色で統一された少女は、一蹴りで熊の左腕を蹴り飛ばした。その直後に、美麗の鎌がパリン、と音を立てて消えた。あと少し遅れていたら、美麗は確実に仕留められていた。
華麗に着地した少女は、彼女たちと背のくらいは同じくらい。腰まである真っ黒な髪、金色に光る瞳。夜空を飾る月を思わせる少女だった。
「月実!!」
「挨拶は後です、今はあの魔物を倒します」
地面に座り込んでいた美麗を引き上げ、月実と呼ばれた少女は魔物に目を向けた。
「倒し方、分かるの?」
「はい、あの十字架のマークを一斉に攻撃しないと倒せません。バラバラだと、すぐに傷口が修復してしまいます」
月実が軽く両手をパンと叩くと、黒いオーラを纏った剣が出てきた。その次に美麗も同じように氷の鎌をもう一度作り上げる。
「しかし、問題が一つ。あの魔物の弱点は、本当は三つあります、あと一つが…」
「…分かった。僕ができるだけ、注意を引きつける。その間にもう一つの弱点を探し出して」
彼女の登場により、どうにか落ち着きを取り戻した鈴は、頭をどうにかフル回転させ、フォーメーションを思い浮かべる。
まずはあの魔物が自分を狙うように攻撃を仕掛ける。その後、美麗と月実がもう一つの弱点を見つけ出す——しかし、残りの魔力も少ない。よくても、後4回くらいしか攻撃ができない。
熊をおびき寄せるのに、一回。熊の意識が二人に行かないようにする攻撃が、最低でも二回……。こう考えれば、弱点を三人で一緒に討つときは一回きり…。一か八かの懸けだが、やるしかない。
「ブリザド!!」
大量の氷のつぶてが、熊の背中を突き刺す。狙い通り、熊の視線はこちらに向かった。鋭い視線は完全に鈴をロックオン。今にでも、熊は突進してくる。
「美麗!!月実!!頼んだよ!!氷柱地獄(アイシクルヘル)」
もう一度、ヨーヨーを振り回し、氷の柱を出現させた。魔力が少ないため、今回は少し小さめだ。しかし、今は攻撃のためではない、注意をおびき寄せる。そのために魔力を大きく使う必要はない。
氷の柱は同じ腕と足に突き刺さる。三発目の小さな氷の柱は熊の顔を狙ったが、動ける方の右手でガードされた。
「漆黒ノ雷(ダークサンダー)」
手から雷をだし、右肩の十字架を狙った。漆黒の闇のような雷は見事に十字架に命中。しかし、やはり傷はすぐに修復される。
右肩を狙われたことにより、今度は月実を標的とし、突進しようと、熊は構えたが、鈴がヨーヨーをうまく操り、太い首を締め上げた。
「美麗、月実。僕分かったよ、こいつの弱点……目だ」
「目…どういう事ですか?」
暴れる熊の首をもっときつく縛りつけ、動きを止めようとするが、とても女の子が一人で支えきれる力ではない。歯を食いしばりながら、どうにか踏ん張る。
それを見た月実は、鈴がこの質問に答えられる余裕がないことを悟り、彼女も加勢した。
「漆黒ノ鎖(ダークチェーン)」
闇の様な鎖は地面から植物の蔓ように伸び、熊の全身を縛りつけ、それによって熊は足をとられ、地面に倒れ込んだ。
「説明は後!!美麗は右肩、月実は胸、僕は目を狙う!!」
鎖がミシミシと音を立てている。早く決着をつけなければ、また大熊は暴れ出す。魔力が残り少ない今、そうなってしまえば、一気に全滅する。
ハァ、と心を落ち着かせるようにため息をつくと、目の色を変え、自分が討つべき場所を睨みつけた。
いつもと雰囲気が全く違う鈴。一度は美麗を危険にさらしてしまった。もしあの時月実が来なければ——。考えたくもないが、友達を失っていたことになる。だから、次は絶対に失敗はしない。自分を信じてくれる彼女たちのためにも。
「行くよ!!攻撃は三秒後!!」
今の距離からでは、自分の攻撃が間に合わないのは確か。風を切り裂くような速さで、倒れている熊の右肩を狙いに行く。鎌を振り上げた。
「3…2…1…!!氷柱地獄(アイシクルヘル)!!」
「闇空刃(シャドー・クウハ)!!」
「漆黒ノ一撃(ダークインパクト)」
氷の柱が真紅の瞳を、黒いオーラを纏った大きな鎌が右肩を、そして闇の強大な一撃は胸の十字架を狙った。
攻撃は見事に同時に命中した。熊は大きな雄叫びをあげると、体が跳ね上がったりして、痛みにもがいているようだった。
今回は傷口が修復する気配はない。数秒後、熊は叫んだりもせず、おとなしくなった。まだ少し警戒はするが、奴の体はピクリとも動かない。
「やった…」
「すごい!!鈴、アンタすごいよ!!」
「どうして分かったのですか?」
よろけながらも剣を杖代わりにして立ち上がり、熊の瞳を指した。
「さっき、僕が気を引こうとして、攻撃したら、目を隠したんだよ…それで、もしかして目を守ろうとしたんじゃないか、って思ってね…予想が当たって良かったよ」
「そこまで観察できるなんてすごいわね」
「これで一件落着ですね」
「うん、それよりさ、月実はどうしていきなり帰ってきたの?帰ってくるのはまだ一か月くらいあるはずじゃ…」
三か月前。ちょうど守たちが行方をくらませた二か月後の話になる。
嵐から直接彼女に、『潜入調査』の依頼を頼んでいた。夏未はもちろんだが、大きな戦力でもある鈴や美麗も国にはいなく、仕事から帰ってきたばかりで、疲れていることは嵐にも分かっていたが、この事に何してはすぐに行動しなければならなかった。
内容は嵐と悠也、そして月実しか知らない。いわば、極秘の依頼だ。
期間は相当長いと聞き、少なくても四か月は国には帰還できないはずなのだ。
「少し緊急事態が…早く王に知らせないといけないので」
「「緊急事態?」」
二人が聞き返すと、月実は一瞬困ったように眉間に皺を寄せた。どうやら、深刻な問題らしい。
——「ヒロトさんと玲奈さんが拘束されました」