二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 闇元月実、登場&魔法募集中 ( No.550 )
日時: 2011/09/11 19:42
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

41話の続きです



ニンジンやジャガイモ、そのほかいろいろな食材を大量に購入した。
世界が異なっているといっても、変わらないものもあるようだ。ちょうどこの食材たちで、カレーを作ることができる。偶然なのかどうか分からないが、元の世界から旅立つときに、食材を詰めていたバッグの中に、カレーのルーも見つけた。おそらく、荷物整理の時に知らず知らずに詰め込んでいたのだろう。
カゴに山ほどは言っている食材に目をつけ、これぐらいで十分だろう、と城へと戻る。

その帰り道のことだった。

「おじさん、ありがと〜」
「あれ?あの人夏未さんじゃないですか?」

遠くの方で、ここからでははっきりと見えないが夏未が、店の中の人に手を振っていた。腕には白い花束が大事そうに抱かれている。

「花?買ってどうするのかしら?」
「尾行しましょうか!!」

音無が目をキラキラ光らせてうれしそうに言った。ものすごく気になるようだ。というよりも、楽しみたいらしい。

「音無さん!!今は遊んでる場合ではないでしょ!!」
「少しくらいなら…キャプテンたちも許してくれますよ。ねっ、木野先輩」

音無より少し背が高いため、上から雷門は怒鳴りつけたが、反省の色はちっとも見られない。むしろ、木野を味方に引き込もうと、上目使いで彼女を誘う行為に入った。

「い、いいの…かな?」
「大丈夫ですよ!少しくらいなら」
「音無さん、もしかしてもう一人の貴女の性格が移ったのではなくて?」
「秋さん、夏未さん。私も行きたいです。もう一人の守くんたちのことも知っておかないと、不公平じゃないですか?」

冬花の意見に木野と雷門は顔を見合わせ、互いの意志を確認したあと、夏未の後をついていくことにした。今なら、少し早く歩けば、まだ間に合いそうだ。




(あの子たち、あれでバレてないと思ってるのかな〜)

下手な尾行をしている彼女たちが面白くて、たまに立ち止まったり、後ろを振り向いたりして、弄んでいる。その度に、音無たちの心臓は跳ね上がり、バクバクと音を立て、背中に冷や汗が流れた。

「あっ、いけない…遊んでたら時間が…」

時間を結構使ってしまったことに、今更夏未は気が付き、少し足を速め、目的地へと向かった。

「やっぱり気づかれてるじゃない!!」
「大丈夫ですって、夏未さん」
「お、音無さん…遊びもほどほどにね」



「夏未〜結構遅かったね、何してたの?」
「皆は早かったのね。少し、遊んじゃって」
「…お前、つけられてきたな」

音無たちがついてきているのに気付いたのは、守がもともと視線に敏感な体質を持っているから、という訳ではなく、ただ単に彼女たちの尾行が笑えるほど下手なだけで、その場にいる全員が気づいている。

「うん、わざと」
「また余計なことを…」

修也が呆れながらため息をついた、相変わらず夏未が何を考えているのか分からない。時には自分が鈍感なのでは、と思ってみたりするが、明らかに夏未が馬鹿げている行動をとっている。うん、そうだと信じたい。

「……追っ払う…」

秋が腰から拳銃を取りだそうとしたところを、春奈が抱き着いて止めた。それもそうだ、『この場所』で銃弾をブチまかれては困る。

「別にいいわよぅ。あの子たちにも知る権利はあるわ」
「…んなもんねぇよ。勝手に人ごとに突っ込んでんじゃねぇよ。大体…」
「あ〜はいはい。そこでストップ!アンタの愚痴を聞いていたら、耳にタコができる。早く済ませましょ」



ついてきてみると、意外な場所だった。そこはとても広い墓地。亡くなったたくさんの人々が収容されている場所。そういえば、円堂と守が対決する直前、守は今にでも泣きそうな表情で叫んでいた「俺はサッカーをしていて大切な人を失った」と。その言葉と関係があるのだろうか。

「や、やっぱり戻りましょう、音無さん…」
「夜じゃないですから、幽霊なんて出ませんよ。ほら、行きますよ!」

木野と雷門は後ろをゆっくりと歩いているが、音無と冬花はとても楽しそうだ。
ゆっくり歩いていく彼らについていくと、やがて一つの墓の前で立ち止まった。正面には「IKUTO」と書かれてある。男の子の名前だろうか。
すると、夏未から花を手渡され、守が墓の前にしゃがみ込んだ。
何か言っているようだが、ここからでは遠くて聞こえない。もっと近づこうと試みようと、できるだけ足音を立てないように近づいた。ようやく、聞こえるほどの距離になると、近くにあった木に身を隠す。

「郁斗、今年は少し予定が早まったな…」

今のは確かに守の声だ。しかし、いつもより優しく語りかけるような口調で、話し始めた。

「お前、本当にサッカーが大好きだよな。『そっち』でも毎日サッカー三昧だろうな」

手に持ってある花束をそっと供えた。そして、もう一度かつて兄弟のように育ってきた少年の名が刻まれている場所に手を当てた。

「……守」
「変な奴に会ったよ。俺と同じ顔なのに、性格が全然違う…むしろ、お前にそっくりだ。サッカーを真正面から受け止めて、仲間を大切にして、馬鹿みたいに元気で…一瞬、お前なんじゃないか、って思ったりもしたよ…でも、お前はもう『いない』んだもんな……」

話すたびに目じりに涙が溜まってくるのが分かる。
俺は昔、泣き虫だった。転んだり、物を取られたりしただけで大泣きしていた。なぜか、修也と喧嘩している時だけは泣かなかったけど。
しかし、郁斗が死んでから、泣かないようになった。いや、泣けなくなったんだ。泣いたらお前に顔向けができなくて、情けないと思ったからな。でも、ここに来ると、あの時の涙が戻ってきてしまう。

「本当に調子が狂うよ…あいつ等を見てるとさ……俺がどんなに弱くてちっぽけな存在なんだろう、って気づかされる……正直言うと苦しいよ…円堂と一緒にいるとな」







「———俺って本当に馬鹿だ」





同時に左目から涙が頬を伝り、小さな雫となって、地面上に大きく羽を広げて弾けた。