二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 魔法募集中 ( No.561 )
日時: 2011/09/15 20:26
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

42 消えることのない罪

「……守さん、泣いてますね…」
「それほど、亡くなったあの人は大切だったのね…」
「もしかして…」
「?」

冬花が急に話を切り出した。

「もしかして、あの人がまだ生きていたら、もう一人の守くん、サッカーやってたのかな?」
「…かもしれないわね。あの人たちはサッカーを恨んでる…もう一人の私はどうなのかは分からないけど…」

円堂の特訓場所を探してあげようと、雷門は夏未に話すと、彼女はいい場所を紹介してくれた。そこで夏未は明らかにサッカーをやろうという気持ちはなかったはずだ。それを動かしたのも、やはり円堂なのだろうか。
しかし、夏未は動いたとしても、守や修也はボールを蹴ろうともしない。一回だけ守は円堂と勝負をしたが、誰がどうみても、彼は本気を出していない。いや、本気を出すのを恐れているかのような眼差しだった。

そうこうしていると、辺りが暗くなってきたのに雷門は気づいた。今すぐにでも、音無を力ずくで引っ張り、城に戻りたい。それに、早くしなければ、円堂たちの晩御飯がなくなってしまう。メイドが作ってくれるかもしれないが、事前に今日は自分たちが作る、と伝えてあるため、作っている可能性は低い。
音無の肩をつかもうと、もう一度、手を伸ばした瞬間、遠くの方にいる守がゆっくりと立ち上がった。

「おい、そこにいる奴ら出て来い」
「ほら、バレてるじゃない!!!!!」
「ご、ごめんなさい…バレてないかと思ってました…」

音無が申し訳なさそうに、頬をかいた。呆れた雷門は、音無を引っ張りだした。もう隠れても無駄だろう。

「どういうつもりだ」
「え、えっと〜」

言い訳を探そうとする仕草は春奈にそっくりだ。

「やっぱり、カワイイ!!!」

ピョンピョンと小さく何回かジャンプしてから、春奈はまた音無に抱きついた。頬をスリスリさせて、まるで何かの小動物みたいだ。

「私たちは貴方たちのことは何も知らないわ。少しくらい私たちに教えてもいいのではなくて?」
「やっぱり…夏未がお嬢様はないよな…」

修也が後ろで小さく呟くと、夏未はとても輝いている笑顔で、彼の膝を蹴とばした。しかも、関節の部分、軽く蹴られるだけでも痛いのに、夏未はそれ以上に力を込めたため、修也は涙目で跪く。

「つけていたことは、最初から知っていたのでしょ?」
「まぁね、面白そうだったから、遊んでた」
「「……」」

シーンとした空気が数秒。呆れているのは雷門だけではない。

「あ、あの〜そろそろ、晩御飯作らないと、円堂くん達お腹すかせちゃう…」
「カリア達に任せておけばいいのに」
「いえ、いつもそうだと悪いので…」
「う〜ん、じゃあ、私も作る!」

最初に会った日以来、一緒に料理する時間がなくて、夏未は少しつまらなさそうにしていたのだ。やっと、今回その機会ができ、逃したくはないのだ。

「俺たちの晩御飯はどうするんだよ?」
「そこら辺の草でも食べてれば?」
「ぶっ殺すぞ!!」

いつもは守も怒るところなのだが、今はあまり元気があるようには見えない。

「嘘よ、別に豪華のものじゃなくていいんだから、そんなもの食べ過ぎたら、クセになるでしょ?ねっ、木野さん、いいでしょ?」
「え、えぇ…私はいいですよ。夏未さんがいてくれた方が、その分早く出来上がると…思う」
「じゃあ、決まりね!ちょうど材料もあるみたいだし」

冬花の両手に下げてあるカゴの中には、ニンジンやジャガイモなど、たくさんの食材が入ってある。とても重そうだ。

「私が持つよ、重かったでしょ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」

差し出された夏未の手に、冬花はカゴを渡した。腕から一気に重さが消えた。

「よしっ、皆帰りましょ」

離れる前に、もう一度、守はかつての友でもあり、兄弟でもあったあの少年の墓を見つめた。
白い花束が吹く微風に、カサカサと音を立てて、小さく揺れた。






中断