二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 異世界の危機 魔法募集中 ( No.570 )
- 日時: 2011/09/20 21:09
- 名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
「その日以来、俺はサッカーをやらないと決めた。剣士になって、あの日と同じ過ちを犯さないために、冬花を守り、強くなる……だから、サッカーなんてもうやらない…」
下を俯き、守は暗い表情でいままでの話を話した。
どうして、あの時、円堂にこのことを話してしまったのか分からなかった。知らずに口がまるで自分の物ではないかのように、勝手に動いていたのだ。
「あの時、俺はサッカーをやっていなければそんな事にはならなかった。剣士として、強くなっていれば、郁斗を守れたんだ……全部…俺のせいだ…俺が、あの時一番最初に、サッカーをやる、なんて言ったから……」
あの時の光景が、脳裏に鮮明に映し出される。
笑っている、皆。自分も郁斗も修也も姉さんも、皆楽しそうな笑顔を浮かべていた。
それがとても許せなかった。この世界のことなど、何も知らないのに、呑気に笑っている自分が。
泣いてはいけない。それではただの弱虫だ、負け犬だ。だから、必死に流れ出ようとしている涙を堪えた。その代りに、悔しさで両手を強く握りしめた。
「そんな、お前のせいなんかじゃない!!あの魔物が出てきたのは偶然で…」
最初は強く断言していた円堂だが、守の表情を見て、その声はだんだんと力をなくしていった。必死に言葉を探しが、見つかるはずもなく、ついに円堂は黙り込んでしまった。
「じゃあ、誰のせいだと言うんだ?あの時、俺が郁斗を突き飛ばせば、アイツは死なずに済んだ…俺が死ねばよかったんだ…」
心底本当にそう思った。自分なんて何の価値もない人間で、何をすることもできない、兄弟を守ることができない、冬花を信じてあげられない、円堂をサッカーを受け入れることができない、自分など消えてしまえばいい。一層の事、死んでしまった方が楽なのかもしれない。
誰かが悲しんだとしても、それは数日の話。後になれば、自分のことなど忘れて、笑える日など来るはず。その方が皆からも自分からも重荷がなくなる——————
「そう簡単に自分の命を捨てるようなこと言うなよ!!!!」
最後の一言は円堂を怒らせるのには十分だった。立ち上がり、両手を握りしめて、守を上から睨んだ。
「お前が死んでも悲しむ奴がいるのが分からないのか!!!!!冬花も夏未も郁斗も皆、悲しむに決まってる!!!!」
「だったらどうやってその罪を償えってんだ!!!!!俺が余計なことを言わなければ、誰も死ななかった……たとえ言ったとしても、俺が死んでいれば誰の罪にもならなかった!!!!」
「……」
サッカーをやらない理由——彼は郁斗が死んだことを、自分のせいだと今までずっと責めつづけていた。自分の気持ちに嘘をつき、少しでも罪を償おうと苦しんでいた。たとえ、それが守のせいではなくても、彼はこの先、死ぬまで一生自分を責め続けるだろう。嘘という名の鎖で、罪という名の箱の中で……
「……でも、郁斗はそう思っていない…」
あのサッカーをしている時の楽しい表情は、面影を残していなかった。本当にこれが「円堂守」なのか、と疑ってしまうほど、彼の表情は真面目で、強くて、それでいて、どこか覚悟をした色を見せていた。
「なぜそう、わかる…?」
「郁斗は絶対にお前や修也たちにサッカーを続けてほしいと思ってる。あいつが本当に心からサッカーが大好きなら」
「……」
無言で見上げると、そこにはものすごく強い力を感じた。円堂の瞳は、体を射抜かれそうなほど強いものだった。このまま、見つめられたら、心の底まで見抜かれそうだ。しかし、目をそらそうともできなかった、体が動かない。
「ッ……」
「なぁ…明日、俺たちはもう一つの世界に行くだろ?…そこで、もう一度俺たちの試合を見てほしい。今回は目をそらさないで、真っ直ぐに…」
「自分の気持ちに整理がついてからでいい…俺はもう一度…お前にサッカーをやってほしい」
円堂の話が終わると同時に、不思議と金縛りも解けた。すぐに、彼と目をそらす。
これ以上見ていたら、おかしくなりそうだ。
緊迫した空気の数秒後。風丸と夏未に名前を呼ばれる声が暗い河川敷に響き渡った。