二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 魔法募集中 ( No.639 )
日時: 2011/09/30 19:49
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: 漢検とか意味分からんwww

45 早すぎた旅立ち

(早く!!!もっと早く!!!)

王国管理者のヒロト、いや、元・王国軍と言った方が正しいだろうか。彼は焦っていた。
森を出た時に、アルティスの手下、しかも、自分たちの人数を大幅に上回っている兵士たちに追い打ちをうたれ、時間を大幅に浪費してしまった。このままでは——

(姫ッ……!!!!!)

周りなど気にしている場合ではなかった。とっさに移動魔法(アンテノラ)を発動し、スピードを最大値まで上げるが、魔力が残り少ない。今では、立っていることだけでもやっとの状態。カリアと玲奈に支えられながら、いくつもの魔方陣をくみ上げる。
指先からは血が少しずつ流れ始めている。大量に魔法を使ったり、無理やり魔力を練り上げようとすると、その反動で毛細血管が切れてしまうのだ。そろそろ、口の中にも鉄の味が拡がる頃だろう。
だが、今はそんなことをどうでもいい。冬花姫が、円堂たちが危ない——

「伝達の魔法は!?」
「無理だ!王国軍に道具を取り上げられた」

伝達の魔法—ヒロトと嵐が情報を交換し合う時に使う魔法、つまり手紙代わりだ。しかし、それを使うには道具が必要となる。ヒロト達が脱出するだろうと考え、アルティスが取り上げたのだ。

「早く!!!」







「準備はいいですね、皆さん」
「「はい!」」

悠也の問いに、円堂たちは威勢のいい声で答えた。その中には守や修也たちもいる。悠也は神官である同時に、多くの兵士から尊敬されている存在でもある。守たちはその内の一人である。

「そんな顔をしないでください。大丈夫ですよ、冬花姫。貴女なら絶対にできます」
「は、はい」

不安そうな表情を浮かべる冬花に悠也は優しく笑いかけた。昨晩から彼女は、転送の魔法が上手くできるのか、とずっと心配していたのだ。
この世界に戻ってくるときは、冬花が転送の魔法を使わなければならない。もし、失敗してしまえば——と考えるだけでも、背筋がぞっとする。
すっと、息を大きく吸い込み、自分を落ち着かせるように、冬花は深呼吸をした。すると、頭にポンッ、と音を立てて大きな手が乗せられた。自分の兄、嵐の手だ。

「無理するなよ、お前はこの国の姫であると同時に、俺の妹なんだから」
「はい、嵐兄様」

ニコッと冬花は嬉しそうに笑った。完全に緊張が解けたわけではないが、嵐や悠也たちの励ましで心に積もっていた重みが、一気に軽くなった。
やっと、いつもの冬花に戻った、と安心した嵐は彼女の頭を優しく撫でた。

「まっ、ドジってもらったら、フェアリー王国の名が廃れるからな〜」
「な、なんですって——!!!」
「ハハッ、石に躓いて転ぶなよ〜」
「ッ——!!!」

またいじわるそうな笑みを浮かべて、自分よりも背が離れている妹を見下した。冬花は怒りで言葉が見つからず、口をパクパクしているだけ、当然、嵐の敵ではない。

「王、姫、その辺りになさったらどうですか?」

注意をしているのだが、悠也も笑っていた。この光景が少しの間だけ見れなくなるのは、彼にとっても寂しいことだ。

「…悠也、頼んだ」
「はい」

一歩後ろへと下がり、その後を悠也に任せた。
嵐の顔をもう一度確認するようにしてみると、コクンと頷き、杖を掲げた。

「妙なる道/彩たる翼/空間を渡れ/!!!」

一言一言間違えのないように、悠也は呪文の詠唱を開始。ともに円堂たちの足元には大きな黄金色の魔方陣が現われる。
たちまち、光がジェル状のようになり、円堂たちの体を包み込む。

「転送!!!」

体がだんだん軽くなり、空へ向かうように、浮かび上がる。それと共に、光が強くなるのが分かった。

「守!!!」
「…?」

突然嵐に名前を呼ばれた。振り返ると、彼はとても真剣な表情で、自分を見つめていた。





「冬花を……頼んだ」
「……はい!!!」

例えこの体が滅びようとも、世界が崩れ去ろうとも、フェアリー王国の王女—冬花だけは守って見せる。それが、『あの日』の誓い、何があっても必ず———————
隣にいる少女の小さな手を、守は強く握りしめた。











「ハァハァ、ダメだ——!!!!!」

少年が叫んだ時にはもう遅かった。すでに、円堂、冬花たちは光に包まれ、消えてしまった。
——遅かったのだ。
あと一歩のところで、彼—ヒロトは止められなかった。
心には罪悪感と絶望、そして自責——その感情で満ち溢れた時、目の前が真っ暗になった。