二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 時空心中。【イナズマイレブン 隊員募集】 ( No.210 )
- 日時: 2011/03/23 20:52
- 名前: 蒼月白星鏡 ◆kuB5mqYaRs (ID: khxqjExY)
Extra chapter —The first of "Samidare"(『五月雨』の一日)—(昼‐1)
PM11:30
"モーニングサービス"が丁度終わった時刻だ。
他の喫茶店よりも、営業時間が早い為、モーニングサービスは長い。
『五月雨』のモーニングサービスは、トースト一、二枚にハムベーコン、コーヒーの三点セット。
だが、オーナーである円堂があの性格の為、トーストは、おにぎり二個と替えられる。
因みにおにぎりの具は鮭とおかか。
円堂の好みでなったらしい。
そして、この時刻はちょっとしたイベントの時刻でもある。
毎日起こる、イベントの。
「おい、店員!」
「(…またか)」
「(まただな)」
「(まただ)」
「(まただよ…)」
店員だけではなく、オーナーまでもが呆れるイベント。
四人の目線の先には、見るからに不良と思われる人が。
首から生える刺青(いれずみ)は、顔まで登っていた。
「どうかされましたか?」
直々に、オーナーが出る。
作り笑いしながら、訊(たず)ねた。
「短ぇんだよ!」
「…はい?」
訊き直す。
だが、分かっている。
「だから、モーニングサービス短ぇんだよ!!」
やっぱりか、と内心思う。
だが、相手は客。
店を経営している身にとっては、とても嬉しい、まるで「神様」のような人物だ。
怒らせる訳にはいかない。
かといって、黙る訳にはいかない。
怒らせず、相手が最後まで納得できるように説得しなければならないのだ。
「えっと…その……」
円堂は、人を"意識しながら"説くのが苦手なので、どうしても言葉が詰まってしまう。
見かねた鬼道が、円堂の前に出る。
「お客様」
「あ゛ぁん?」
客は相当不満らしい。
「僕達は、この時刻を皆で決めたんです。
お客様がいかに喜んで貰えるか、考えた結果が、営業開始時刻から、今の時刻まで、という事なのです。
これ以上長くしてしまったら、モーニングサービスの意味は成しません。
なので、申し訳ありませんが、もう時刻は過ぎてしまったので、受け付けておりません」
相変わらずの丁寧な対応。
しかし、客は
「テメェ、客を喜ばせたいのなら、もっと時間を長くしろよォ!!!」
まだ不満であった。
鬼道の話で更にイラついたのか、テーブルをひっくり返した。
食器は割れ、飲み残したコーヒーは零(こぼ)れ、客は悲鳴を上げる。
更には椅子を地面に叩きつけ、木屑が飛び散る。
朝(もう昼に近いが)からこんなのでは、店側も、客側も不満だ。
堪忍袋の緒が切れたのか、豪炎寺は自分の刀の柄にそっと手を出した。
そして次の瞬間、
たった一瞬の出来事だった。
不良の動きがピタリと止まったのだ。
周りには、風で吹き飛ばされた様な跡(あと)がある。
それもその筈(はず)。
不良の首元には
ほんのりと紅い刀の刃先があるのだから。
「これ以上うちの店で暴れて貰っては困る」
鋭い視線と、冷たい声で不良は動くことさえできなかった。
「ヒ…ヒィ……」
声は泣いている。
「こっちはこっちで頑張っているんだ。愚痴つけるようなら二度と来るな。
それとも来るのなら、
お前の首を刎(は)ねるぞ」
その言葉を聞いた途端、不良はわんわんと泣きながら逃げた。
逃げたのを確認すると、静かに刀を鞘へしまった。
「流石だな」
「助かったぜ…」
「これ位しなきゃ、店の名が、ルーセント護衛隊副隊長の名が廃(すた)るからな」
彼の表情は未(いま)だに冷たいまま。
「そうでなくっちゃね、豪炎地君♪」
吹雪だけは満面の笑み。
他の三人は、改めて吹雪の黒さを感じたのであった。
掃除中。
「今の剣業、凄かったな!」
円堂のはきはきした声に、豪炎寺は「そうか?」と首を傾(かし)げる。
「だって、刀を鞘から抜いたところ、全く分からなったんだぜ?!」
「…師の教えだ。師匠の教えで出来たんだ」
「その師匠も凄いと思うよ?だって刀を鞘から抜くだけで、周りの物が吹き飛ぶ位の強風が巻き起こったんだから」
「吹雪の言う通りだ。それに、まだ理由はある。数え切れない位にな」
そんな雑談をしていると、当の本人が現れた。
「…えっと、何か今の雰囲気のピッタリの諺(ことわざ)、無かったっけ?」
「"噂をすれば影が刺す"、か?」
「あぁ、それそれ」と円堂が納得したかのように言う。
納得しているのかどうかは分からないが。
「悪口は言っていないと思うが…」
「言おうとした、の間違いじゃないかな?」
「うーわぁ、今日もか。円堂達も大変だね」
客は会話の内容を気にしていないようだ。
「…で、今日は何の用だ?
未来」