二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ◆゜×-藍色扇子【銀魂】-×゜◆ ( No.13 )
日時: 2011/02/20 21:42
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:                      2階建ての明日へと


◆゜×—— 壱


突き放されるのが怖かった。だから、我から突き放す。そうするしかなかったのだ。
きっと、この我を見たら、あやつ等とて我を恐れ、嫌うだろうから。

死んでも良かった。死にたかったと言っても強ち嘘ではない。
ただ、死ぬるのであれば、あやつ等の役に立って死にたかった。

だから。

『今日この日で、藍風魔は見納めだ!!! せいぜい悔いの残らぬよう、我を脳裏に焼き付けて死んでゆけェェェェ!!!』

そう叫んで、我は駆け出した。精一杯、不安を心で潰しながら。
一心不乱に、周りが見えなくなりながら、扇子を奮った。

「泉菟ウウウウウウウウウウ!!!!」

あいつの声も、聞こえないぐらいに。





かつて、侍と天人が火花を散らした攘夷戦争の際に、白夜叉と同等に恐れられた人物が居た。
それは大型の藍色の扇子のような武器で敵を蹴散らし、藍色の長い髪を靡かせ、戦場を駆ける、一人の女。

名を、双染泉菟。

彼女が持つ扇子は一度扇ぐと突風が巻き起こるという不可思議な物で、彼女はそれを自身の武器とし、活用した。
そんな彼女を天人は【藍色の風の魔物】、略して≪藍風魔≫と呼び、恐れた。

しかし彼女はある日単身で天人達の陣に踏み入り、その陣の天人達を壊滅させてから、忽然と何処かへ姿を消してしまったのであった。




時は江戸、天人がふんぞり返りながら闊歩するこの時代。
かぶき町の万事屋銀ちゃんの店主、坂田銀時は恨めしそうに窓の外を覗きながら

「さみー、さみーよー。ったく、お天道様はいつになったら有給休暇から帰ってくるんだコノヤロー」
とぐう垂れた。

「よく言うヨ、夏は散々有給取れって言ってたくせに。大人って勝手アル」
そんな銀時に呆れた視線を送りながら白い大きな犬と戯れているのは、夜兎という種族の天人で大食い娘の神楽である。白い犬は定春。

「でも本当に晴れの日がありませんね。雪が降るばかりだし」
そしてこちらは万事屋兼ツッコミマシーン兼ダメガネの志村新八である。

「あれ、なんか僕だけ説明文酷くないですか……?」
ダメガネは黙っていてほしいのである。


今年の江戸の冬は記録的な豪雪で、毎年さほど積もらないかぶき町もたくさん雪が積もった。案の定今日も豪雪。
おかげで毎日低気温で、寒さに弱いかぶき町住人はあまり外出しないようになった。
そのせいで万事屋に依頼に来る客も少なくなりつつなってきたのだったが…………

≪ピーンポーン≫

軽快なチャイム音が、廊下を通じて万事屋の居間内に届いた。

「おいおい勘弁してくれよ、こんな日に依頼なんて3秒で凍死するわ」
銀時は眉間に皺を寄せ、面倒くさそうに廊下のほうを見やった。

「居留守使うアル。居ませんよー居留守ですよー!!」
「ちょっと、それ居留守って言ってんじゃん神楽ちゃん! ていうか駄目だし!! ほら銀さんも、外に居る人のほうが先に凍死しちゃいますよ」
失礼な事を叫ぶ神楽の口を塞ぎながら、新八は銀時を促した。

≪ピ————ンポ————ン≫
いかにも「居るの分かってんだぞー」と言うように、今度は長く聞こえてきたチャイム。

「ほら、銀さん!!」
「チッ、わーったよ出りゃいいんだろ出りゃ!!」

仕方なく席を立った銀時は、未だ鳴るピンポンに顔を顰めながら玄関へ向かった。


◆゜×—— つづく


銀さんがただのニートみたいになった件^p^