二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN!】†BLACK†第31夜UP ( No.412 )
- 日時: 2012/12/12 02:08
- 名前: ちぃ ◆BtgqVElJ1I (ID: z5ML5wzR)
- 参照: http://x110.peps.jp/kokyon7314/free/?cn
第32夜 【忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな】
「まあ一応魁もマテリアルだったのだ、葬儀くらいはしてやろう」
ヴィクトリカのその発言により急ピッチで式場作りが始まった
幸いにもマテリアルの僕らに身内はいないから必然的に葬儀に呼ぶ人間は少ない
ゴシック調の教会のステンドガラスにはイエス・キリストと聖母マリアがかたどられている。
こんな魔の者ばかりの葬式にキリストだなんてと僕は自虐的に静かに笑う
そして月光がステンドガラスから差し込むそのしたには白いバラの敷き詰められた柩が置いてある
そしてその中には…
「…ほんとに死んじゃったんだね」
ポツリと呟くアリスは柩の中を眺めて言う
「確かに…変な奴だったけど…でも…やっぱり…なんだかんだいい奴…だったわよね…」
「そうっすね…」
各々の気持ちを柩を眺めながら言う彼女たちはなんと小さきことか
僕は柱に寄りかかり遠目からその様子をじっと見つめていた
不意に背後から聞き覚えのある声がかかった
「お前はもう見たのか…葵」
姉さまだった
「いいえ」
「なんで見ないんだ…?」
そういう姉さまはもう柩を見たようで目が腫れている。
きっと泣いたのだろう
「なんでですかね…なんでか見る気にならにんですよ」
「そう…か…」
「アイツを殺すのは僕だと信じて疑わなかったんです。奴は…まあ言いたくはないけど…強かったし、それを殺せるのは僕だけだって思ってて…いつからか死にたい、と願うのと同じようにそれも僕の目標の一つになっていたんです…」
「そうだな…魁は…強かった…」
「きっと僕は今喪失感を感じているんでしょうね」
「喪失感?」と姉さまは泣き腫らした瞳で僕を伺う
何故かその瞳が痛々しく思えて顔を背ける
「ええ、目標を失った喪失感です」
「…それは…永遠に死ねないとわかった時と同じようなものか…?」
「…きっと…そうなんでしょうね」
しばらく静けさが漂う
「葵の番だ…花くらい手向けてやれ…」
その姉さまの声に重々しく僕の足は動き出す
とうとう柩の前までやってきてしまった
その中を覗くのが
コワイ
きっと見たら現実を突きつけられてしまうから。
僕は右手に白い薔薇を握り
痛みを感じることもなく意を決して覗き込む
だが予想していた喪失感や怒り悲しみはやってこなかった
「…葵?」
背後から姉さまの声がかかる
そして僕を包み込んだのは
純粋に嬉しいという気持ちだった
「ふ」
「あ」
姉さまが「葵」と呼ぶ声も無視して
「ははははははははっ!!!」
僕は大声で笑った
「葵…どうしちゃったの…?」
月夜は心配そうにこちらを見ているが構うこともできないくらい僕は笑いをこらえることができなかった
「ははっはは!!」
お腹もいなくなるくらい笑ったあとに僕を襲ったのは怒りだった
「…はは…あーあ…そうですよね、やっぱ」
「な、何がそうなの…まじキモイんだけど…」
「煩いですよ。あーあ…ホントに…
ムカつく。」
忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな_____
僕は柩から離れ背を向け扉に歩き出し思い切り扉を開け放つ
堅苦しい黒いネクタイを緩め第二ボタンまで開けて腕まくりをする
思いっきり伸びてそれから教会の中で見たのと同じ月を睨む
だが何故かその月は教会の中で見たものとは違って
とても明るく見えた
「…何見てんだこのやろー」
そう月にポツリ呟き僕はやっぱり笑う
こんな詠があった
忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな
あなたに忘れられる悲しさはなんとも思いません。けれども、神に誓いになったあなたの命が神罰で失われるのではと惜しまれてなりません
ならば僕はアイツにこれを詠もう
忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな____
てめぇなんざに忘れられても痛くも痒くもないんだよ。
だけどな
あの日皆で誓ったあの約束を忘れるなんざてめぇは神罰受けて死にやがれ。
風流の欠片もない下品な言葉だけど
それでも僕はアイツにこれを詠まずにはいられなかった
「皆で戦う、そう誓ったのはお前じゃないですか
魁」
「あーあ、疲れるねぇ、なんつーか気持ちを持ってる生き物はホントに疲れる」
「おかえりなさいませオデット様」
「はいはい、ただいま」
バタンと自分の部屋の扉を閉めてその独り言を聞いてたであろう1つの影に問う
「なあ、お前もそう思わねぇ?」
するとふ、とその紫の影は笑った
「えぇ
でも気持ちを捨てるには守りたいものが出来過ぎてしまいましてねぇ」
あの日誓った僕らの誓い
マテリアルの僕らの誓い
それはどんな誓より強力で大切で守らなくてはいけない誓い
「皆で一緒に戦おう」
そう言ったのは幼い日のお前じゃなかったのか
「魁」
そう一言影の名前を呼ぶとやはり紫の影はふ、と笑った_____