二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.Gray-man -contrast- ( No.3 )
日時: 2011/02/15 18:42
名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: wJNgr93.)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode


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 地獄絵図とはこの事だ、と思った。

 辺りに立ち上る炎と煙。響く爆音と充満する死臭。

「カレン……ねえちゃん」

 腕の中で弟が途切れ途切れに私の名前を呼ぶ。

「しっかりするのよ! シン!」

 消えないでくれ、と激しく肩を揺らして叫ぶ。

 自分の声が震えているのが分かる。いくら止めようとしても目からは涙があふれていく。

 わたしが泣いていたら、シンを不安にさせてしまうではないか。

 シンの体を埋め尽くすように広がっていく黒い星、星、ホシ……。

「ごめんね、ねえちゃん。ボク失敗しちゃった」

 シンは抱えていた剣を抱き寄せた。

 わたしにとっては憎らしい剣をシンが大事そうに抱えているのが歯痒い。

 そして最後に微笑み———



 —————。

 ———。



 爆音はまだ続いている。

 私の腕の中に残されたのは鈍く輝く大きな剣だけ。



 ————— 戦え!—————




 序章 — 罪に惑う光 —

 1 ———


 エクソシストの総本山、黒の教団。

 カレン・ブルーナは目覚めてからしばらく天井を見ていた。

 ———いやな夢を見た。

 それは今も心を傷つける記憶。

 ふと、視線を感じた。

 その先を辿ると一枚の写真と目が合った。

 部屋の隅の机には写真立てが置いてあり、その中では幼い少年が無邪気に笑っていた。

 それは、この冷たい部屋とはとても不釣合いに見えた。

 カレンはおもむろに立ち上がると洗面台までふらふらと進む。

 無機質な石造りの床の冷たさが脚を伝いこみ上げる。

 カレンはそんなことを気にもせずにそのまま洗面台に両手を着き蛇口の下に頭を突っ込む。そのまま全開までひねり冷水を浴びる。

 長い髪を冷たい水がつたっていく。

 ———この水がすべて流してくれたら良いのに。

 流れていく水を色の無い瞳で見つめる。

 ———分かっている。この苦しみは消えない。この記憶は消えない。

 水を止めてもしばらく同じ体制でたたずんでいた。


 コンコン……


 ふいに扉が叩かれた。

 濡れた髪を拭きながら出向く。この時間に来るのは———

「おはようカレン」

 扉を開けると金髪でレイピアを携えた女性——カレンと同じ黒の教団エクソシストのティナ・スパークが立っていた。

 ティナはいつもなかなか起きて来ないカレンを心配してか、毎朝こうやってカレンの部屋を訪れるようになっていた。

「おはよう、ティナ」

 いつものようにティナを部屋の中に入れた。

 ティナはいつものようにのろのろと髪を結び支度をするのを何も言わずに待っていてくれる。

 一通りしたくを終え最後に写真立てを軽く撫でる。

 ———シン、行ってきます。


「お待たせ。行こう!」

 カレンが弾む声でティナに言う。

 その顔には先程までの冷たさはなくなっていた。

 ティナもその変化について何を言うことも無く朝食についてなど軽口を叩きながら共に部屋を出て行った。