二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D.Gray-man -contrast- ( No.106 )
- 日時: 2011/09/03 13:30
- 名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: bVlGyEWK)
2———
暗はその夜、幽霊城と呼ばれる城へと足を運んでいた。
なかなか寝付かない弟を寝かしつけていて遅れそうになったので少し急いでその場所へ向かう。
同じ町でも城の近くは寂れていた。皆この幽霊城を怖がっているのだ。
夜な夜な何かが割れるような音が響いてくると言う噂が町中に広まっている。悪い噂に逃げ出す人が多かったのだろう。
今では空き家が多く人通りも少ないのでホームレスなども多く治安が悪い。
暗はそんなこと気にもせずただまっすぐ城への道を急いでいた。
城門にたどり着く。ノックをしようかと思ったが馬鹿らしくなってやめた。
勢いよく門を開け、慣れた足取りで廊下を進む。
証明などは一切無く窓から月明かりが入る程度でかなり暗い。
進んでいくと奥に光が見えた。突き当りの部屋、目的地のホール。
とても高い天井から豪勢なシャンデリアが吊り下げられている。そして、床には金色の刺繍の入った赤い絨毯が敷かれていた。
ただシャンデリアは所々崩れ金のメッキが剥げているし、絨毯は穴や傷だらけで散々な有様だ。
ホールにはすでに先に来た仲間がそれぞれ指定された席に着いていた。
「よく来たわね、アンちゃん」
自分の席について他の仲間と喋っていた金髪をツインテールにした女性が暗が来たことに気付き声をかける。
暗は言葉にムッと眉をひそめる。
「私にちゃん付けしないでよ、イナラミ」
暗がイナラミと呼んだ女性——イナラミ・レートスは「まあまあ」と全く意に介した様子は無かった。
暗にとって自分にちゃん付けされることは何だかとても不自然で気持ち悪く感じた。イナラミに悪意などは微塵も無いのだろうが。
そんなことを思っているとイナラミと一緒に喋っていた金髪の男が口を開いた。
「黒山にしては遅かったな。夜一番に来ると思ってたぜ?」
暗は一瞬言葉に詰まる。
———男は苦手だ……。
軽口を叩く金髪の男——リオン・ワーディアからすぐに顔を背ける。
「私にも色々あるのよ……」
そう言ったきり暗は黙ってⅩⅠの番号が書かれた自分の席へと去っていった。