二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.Gray-man -contrast- ( No.109 )
日時: 2011/09/06 22:30
名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: bVlGyEWK)

 イナラミは自分の席へ去っていく暗を残念そうに見送った。

 ホールには椅子が並べられており一番奥にⅠの番号が書かれた席がありそれ以降は右手に偶数番の席、左手に奇数版の席が並べられており全部で十三席置かれている。

 イナラミのⅣの席と暗のⅩⅠの席は離れているので気軽に喋ることができない。

「あれ、また怒らせちまったか?」

 Ⅱ番の席に座っているリオンは髪をかき上げながらちょっと困ったような表情でイナラミにたずねる。

「怒ったり嫌がったりしてる訳じゃないんだと思うけどね。まあリオン君は気にしなくて良いよ」

 イナラミの言葉にリオンはますます腑に落ちないといった感じであった。

「それにしても、テオは遅いね。何してるのかな?」

 イナラミが話題を変える。

「あの野郎は城住みのくせにいつもいつも遅せえからな」

 テオというのはイナラミの向かいのⅤ番の席が与えられている男で相当な気分屋だ。

 イライラすると周囲の物を破壊する癖がありその音は城の外まで響いている。

 城下の町で噂になっている幽霊城から聞こえる何かが割れる音と言うのはこいつが原因であろう。

 また、もともとボロボロになっていた城をさらにひどい有様に変えることにも一役買っている。

 そんなことを言っていると血のような赤い瞳を持つ囚人服を着た男がホールに入ってきた。

「あー、だりー」

 短く切りそろえられた茶髪をぼりぼりとかきながら他の仲間とは目も合わせずに自分の席に座る。

「あら、テオ。今日はローテンションモード?」

 イナラミがテオ——テオ・バルトロに話しかける。

 基本ハイテンションで血の気が多い彼だが急にテンションが下がるときがある。今はそのときらしい。

「だらしねえ野郎だな」

 リオンの言葉にテオの眉がピクッと反応した。

「あ? てめえ喧嘩売ってんのか!」

 さっきまでだるそうに座っていたのが嘘のように立ち上がりリオンに吠える。

「は? 事実言ってるだけだろ?」

 リオンも言い返すのでそのまま言い争いに発展してしまった。

「やんのかこのひ弱!」
「やらねえよこの暴走馬鹿野郎!」

 古株で仲間思いの二人は仲間内でも信頼の厚い。だが、二人そろうと喧嘩になることが多いのだ。

「二人ともいい加減にしなさい!」

 見かねたイナラミが止めるまで二人はずっと言い争いを続けていた。


 そんな様子を傍目にⅧの席でアルセイス・ヴェルドソードは読書に勤しんでいた。

 他の仲間も思い思い過ごしているようだ。

 十三ある席の七つは埋まっておりⅩⅢの席は空席、ⅠとⅢは他の全員がそろってから来るのだろう。

 後来ていないのはアルセイスの向かいのⅨと隣のⅩだ。この二人は幼い容姿とその内に秘められた底知れぬ力から仲間内からも異端な存在とされている。

 そして斜向かいのⅦ。

「ホワイトならどこかに隠れてんじゃない?」

 アルセイスの思考を知ってかⅩとは反対の隣席のⅥであるジュジュ・トーンが声をかけた。

 ホワイト呼ばれたのはⅦの番号を持つ華奢な少女、ホワイト・ダンスのことである。

 気弱な娘で人見知りも激しいのかホワイトよりも新顔であり意図的に仲間と距離を保とうとしているアルセイスよりも仲間内で人と喋っている姿を見ることが無い。

「あの子恥ずかしがり屋だからシャルペシアがきたすぐ後に入ってくると思うよ」

 ジュジュはそういいながら薄くいやらしい笑みを浮かべた。

「それにしてもあの二人は遅いな、俺が探して来ようか?」

 反対側で退屈そうにⅩⅡの椅子にもたれかかっていたウィン・スパークスが痺れを切らしたようでそう提案してきた。

 そのときちょうど二つの影がホールの中に入ってきた。

「遅くなってすまない。……おいアペルプシア、一応お前も謝れ」

 長い銀髪にとんがった耳、白いローブとそして幼い姿。シャルロリア、通称シャルが共に来た少年に促す。

「え? ああ、ごめん」

 シャルと同じ型の漆黒のローブに身を包んだ少年。黒に近い青紫の髪と燃えるような赤い瞳——アペルプシア通称ペシアはシャルに促されるまま気の無い謝罪をした。

「遅せえよお前らー」

 文句をたれる自称Sのウィンに向かってシャルは厳しく言い放つ。

「貴様に謝罪していないし貴様に文句を言われる筋合いは無い」

 ジュジュも面白がって「そーだそーだ!」などとはやし立てている。

「なぜだ! 俺は何も間違った事言ってないだろ! 文句を言う筋合いあるだろ!」

 ぐちぐちわめくウィンに更なる罵声が浴びせられる。

「理不尽だー何で俺がこんな目にー!」

 哀れなウィンであった。

 その騒ぎの中いつの間にかホワイトも席に就いていた。ジュジュの予想は当たったようだ。