二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.Gray-man -contrast- オリキャラ募集中 ( No.34 )
日時: 2011/02/20 16:34
名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: wJNgr93.)

 3———


 カレンはスイスに向かう列車の中で任務の資料に目を通していた。

 急ぎの任務とはいえ国をまたぐ移動であるため要する時間は長い。嫌になるほどに。

 資料によると———

 場所はスイス東部のセント、アルプス山脈の一角。

 対象は雪女。

 ———イノセンスが本物だとしたら雪女と言うのはその適合者だろうか?

 ファインダーが目撃した雪女は一帯を凍りづけにし、また彼に幻夢を見せたそうだ。

 また、周辺ではアクマの残骸が複数見つかっている。

 ———幻夢、か……。

 派遣ファインダー八名。内二名他界。

「なかなか難儀な任務になりそうだな」

 先程までカレンと同じように資料を読んでいたアーノルドが険しい表情で話しかけた。

「ええ、ファインダーが二人も……」

「これ以上被害を拡大させないために俺たちが行くんだ」

 やさしく声しかしそれでいて力強い言葉にカレンはアーノルドの内にある覚悟が見えたような気がした。

 ———彼はエクソシストになってから結構長いのだろうか?

「そう言えばわたしエクソシストになって二年目なんですけど、お見掛けしたことがなかったので……」

 ふと、頭の中にあった疑問をぶつけてみる。

「ああ、一昨年ほどから師匠の任務に同行してたんだ。エクソシストになったのは八年前だ」

 アーノルドの師匠——ケビン・イエーガー元帥は最高齢の元帥で、高齢ながら常に第一線で活躍をしているエクソシストだ。

 元教師であり温厚で慈悲深い性格のイエーガーの影響をアーノルドも受けているのが感じられた。

「師匠にいつまでも自分に引っ付いているんじゃないとお叱りを受けてな」

 アーノルドは気恥ずかしそうに苦笑した。

「いい師匠をお持ちなんですね」

 アーノルドはまたテレながら礼を言いそのまま話を変えようとした。

 ———……気を使われている。

 カレンはそう感じた。アーノルドは先程自己紹介をしたわずかなやり取りでカレンに師匠について聞くことは厳禁だと感じたのであろう。

 カレンの師匠であるオーガン・シグバール元帥は二年前、カレンの修行期間を終了してすぐ後に失踪した。

 オーガン元帥は失踪癖のあるクロス・マリアン元帥とは違い通常時の教団本部への連絡、帰還を怠らない人であった。

 しかし、それが何の前触れも無く消息を絶ったのだ。

 オーガンの指導は厳しく辛いものであったがカレンは良い師匠だと感じていた。

 しかし、カレンには彼が考えていることが少しも分からなかった。

 人と接するとき少なからず相手の考えを知ることができる。だが、彼は指導をするときもアクマを倒すときも、いつも別のなにかを見ているように思えた。

 ———師匠は今どこで何をしているのだろうか?

 いつの間にかアーノルドは口数を減らし窓の外を眺めていた。

 静寂を列車の単調なリズムが刻んでいた。