二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.Gray-man -contrast- ( No.54 )
日時: 2011/02/24 18:20
名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: wJNgr93.)

 7———


 暴走したイノセンスは相手がエクソシストあろうとも牙を向く。ティナやカレンのことは心配だ。

 だが、ティナは強い。それに、今は彼女たちを信頼して目の前の敵を倒すことを最優先に考えるべきであろう。

 アーノルドは見据えたアクマに隙無く構え、相手の出方を伺っていた。

 ———イノセンス発動!

 アーノルドの対アクマ武器は円形の盾で言うまでも無く防御面では特筆すべき効果を発揮する。

「うっとうしいやつだ。胸のマーク、お前らがエクソシストだな」

 苛立たしげにアクマが言う。

 氷の壁はまた、アクマと雪女とをも阻んでいる。

「ああ、俺を倒さないとイノセンスには向かえないな」

 アーノルドは挑発的な笑みを浮かべた。

 アクマは目に見えて怒りを増していく。

 ———挑発に乗りやすいタイプだな。

 戦闘において平静を保つことはとても重要なことだ。その点においてこのアクマは欠けていると言って良いだろう。

 しかし、レベルアップしたアクマは油断できない固有の自我を持つことで単調な行動しかしないレベル1に比べ思いもよらない動きを見せることもある。

 アクマがアーノルドへ駆け出した。

 アーノルドは盾を構えつつ相手の動きを一つ一つ確認する。

 先程と同じような前足の一撃を盾で軽くいなしながら避け一歩退く。

 アクマはそのまま着地した左前足を軸にアーノルドに向き直り一っ飛びで距離を詰め今度は右足を軸に体をひねり勢いよく尻尾を振るった。

 アーノルドはそれを盾で受け受け止めることはせずその衝撃を利用し飛び退く。

 それから幾度かアクマの攻撃を受け避け外し動きを見極める。

 ———尻尾と前足がこいつの攻撃の機転か。

 冷静に戦うアーノルドにアクマの苛立ちは増しているようだ。 

「てめえ! さっきから守ってばかりでそんなんで俺が倒せるかよ!」

 唾を散らしながら吠え立てる。

「受け流すことも受け止めることもできないスピードとパワーでぶっ潰してやる!」

 体制を低く尻尾を立て、そして飛び上がる。

 先程と同じ——いや、先程を上回るジャンプ攻撃。なるほど防御に特化したアーノルドの武器でもこの攻撃をまともに受けたら潰されてしまうかもしれない。

「おまえ、勘違いをしているな」

 腕を引き、そして突き出す。

 アーノルドの盾がまっすぐに飛びアクマの無防備な顔面を捕らえた。

 衝撃時鈍い音がしアクマは地面に打ち落とされた。

「その攻撃は隙だらけだ。遠距離攻撃を持つ相手にとってはな」

 アーノルドは盾を手元に戻し次の攻撃を備える。

 アーノルドの対アクマ武器の本質は腕輪と盾を繋ぐ自由に伸縮する鎖にあり、ヨーヨーのように振り回すことで盾の質量と遠心力を加えた高い威力の高速攻撃を放つ。

 アクマは倒れたまましばらく動かなかった。激しい攻撃をまともに喰らったとはいえそれで破壊できたとはとても思えない。レベル2とはそれほどまでに頑丈だ。

「アハハハハ!」

 ———!!

 倒れていたアクマは倒れた体制のまま急に大笑いしだした。

 腹がよじれるほどの笑いと言うのだろうか、大声で笑い続けた後息をつきのろのろと立ち上がった。

「わるいわるい、さっきはイライラしちまってまともに戦ってやんなかった」

 先程の様子とは全く異なるじっとりとした据わった目をして言う。

 ピンと尻尾を立て首を一度くねらすと、三つまたに分かれた尻尾がさらにそれぞれ三つずつ分かれる。

 ———これからが本領発揮ということか……。

 九尾のきつねと化したアクマは一度吠えるとその尻尾の先から火の玉を現した。

 火の玉はゆらゆらとアーノルドの周りを漂い取り囲んでゆく。

 ———これだからアクマは……。まったく難儀な戦いになりそうだ。

 取り囲む火の玉とアクマを見据えアーノルドはこれからどう戦おうかと考えていた。