二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.Gray-man -contrast- ( No.70 )
日時: 2011/03/10 19:38
名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: wJNgr93.)

 10———


 本領を発揮したアクマにアーノルドは苦戦を強いられていた。

 先程の手っ取り早くダメージを与えようとする行動パターンから打って変わり、後の先をつくカウンター攻撃やフェイントなどを取り入れられ見極めがとても難しい。

 そして現れた九つの火の玉。

 ———こいつが厄介だ。

 火の玉はとてもゆっくりとしたスピードでアーノルドの周りを漂っていた。

 速さ方向共に不規則な動きを見せ、捕らえ辛く、気を逸らすと隙をつきアーノルドを襲う。

 ———注意すべきものが十個もあっては……。

 アクマがアーノルドに迫る。

 アーノルドの一歩手前で一瞬止まる。

 ———フェイントか! だが!

 後ろから火の玉が迫るのを見逃さなかった。

 アーノルドは側方に大きく飛んだ。

 寸手のところでアクマの攻撃と火の玉を何とか避けることができた。

「甘いぜ」

 アクマがにやりと笑う。

 ———こちらにも火の玉が!?

 着地途中で体制を整えることもできず、火の玉がアーノルドをまともに襲った。

 ダメージを受けた隙をつきアクマと火の玉が次々と襲い掛かる。

 攻撃をかわすたびに受けるたびにその行動一つ一つが隙へと繋がる。

 その一つの隙をつかれダメージを受けることによりさらに隙を作ることとなる。

 しかも一度攻撃を加えた火の玉はアーノルドを焼いても消滅することなく再び宙を漂う。

 アクマだけなら火の玉だけなら造作も無い相手になぶられる。

 ———屈辱だ……。


 戦いにおいて地の利を得ることはとても重要だ。

 それは勝敗に大きく左右する。

 アーノルドは壁際に追い詰められていた。

 ———最悪な状況だ。

 火の玉とアクマに囲まれ極端に行動範囲を制限される形になった。

 襲い来る火の玉を一つ避ける。また一つ。

 リナリーのダークブーツような武器ならすべてかわし敵を撃つことも容易かもしれない。

 だが、こちらは移動については生身だ。鎖を伸ばしてかぎ縄の要領で移動することもできるが今は鎖を伸ばしてる余裕が無い。

 ———なら盾の特性を活かして全て防ぐか。

 とも考えたが、前方を防いでるとき後ろはがら空きになるしフェイントに耐えることができない。

「くっ!」

 また一つ火の玉がアーノルドを襲をおそった。

 足を焼いたその一撃にアーノルドは思わず膝をついた。

 ———しまった!

 眼前にアクマの尻尾が迫った。

 次の瞬間アーノルドは氷壁に激しく打ち付けられた。

 重力に従い地面に落下しようとするアーノルドに火の玉が追い討ちを掛ける。

 アーノルドはなんとか盾を振るいいくつか火の玉を弾き飛ばす。

 その中の一つが氷壁に大きな穴を開けた。

 地面に落下したアーノルドの傷は深かった。

 ———やられる!

「アーノルド!」

 絶体絶命のそのとき壁の向こう——先程開いた大穴からティナが舞い降りた。

 着地と共にティナの金色の髪がふわりと舞う。

 青い瞳でアクマを睨む。そして素早く構える。

「イノセンス 第二開放! 摩天楼!!」

 ティナが鋭い声で唱えるとレイピアから長い光の柱が伸びる。

 広範囲を巻き込む斬激を振るいアクマたち牽制する。

「大丈夫か!?」

 敵を睨みながら問う。

「ああ、おかげさまでな」

 アーノルドは肩をすくめ気味に答える。

 情けないことこの上ないが最高の助っ人が来たことを心より感謝した。

「カレンは平気なのか?」

「今イノセンスを追っている。私たちはこいつを倒すことに集中しよう」

 アーノルドもその言葉を受け構えなおす。

「援軍登場か……」

 アクマは舌なめずりしながらアーノルド、ティナの両名を睨め付ける。本当に最初とは全くの別人のようだ。

 しばらく硬直状態が続いたが動き出した火の玉が第二ラウンド開始の合図となった。