二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D.Gray-man -contrast- ( No.89 )
日時: 2011/03/22 22:29
名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: 6U7QBJXl)

 13———


 球体の化け物から逃れたカレンたちは建物の中に隠れていた。

 とは言っても周りの建物は破壊され瓦礫が散乱し、時折球体の化け物が近くを巡回しに来ている。

 シンは父を呼び泣いていた。

 カレンとシンを守るために自ら犠牲になった父。こんな悲劇があって良いのだろうか。

 シンの泣き顔を見ないように辺りの様子をうかがいながらその頭を撫でる。

 まだ化け物の横行は続いているようで建物を破壊する音と人々の絶叫が時折響いてくる。

 ふいに近くで爆音が聞こえた。

 驚きに体を震わす。

 影から外の様子を伺うと近くで化け物が一帯の建物を破壊しまくっていた。

 このままではすぐに見つかるか潰されるかしてしまいそうだ。


 トクン———


 ふいに、また鼓動を感じた。

 化け物に追われてからもずっと手放さずに持っていた剣。

 何ですぐに捨ててしまわなかったのか自分でも不思議だ。

 そんなことを考えていると急にシンがその剣をひったくった。

「シン!?」

 カレンはその行動に驚いた。

「ねえちゃんはボクが守るんだ……」

 化け物に向かって駆け出そうとするシンの腕を掴み必死に止めるがシンはそれを振り払い走っていってしまう。

「シン、だめ!!」

 カレンの制止も聞かず化け物に向かっていく。

 シンが化け物に剣を振り下ろすが鈍い音だけ立てて弾かれる。弾かれた反動で小さなシンはよろけてしまう。

 カレンも必死にシンのもとへ走るが、間に合わない。

 化け物の大砲から弾が発射される。

 その弾丸はシンを貫いた。

「シン!!」

 急いでシンに駆け寄る。

 なんとか息をしている。

 カレンは大声でシンの名を呼ぶ。

「カレン……ねえちゃん」

 腕の中で弟が途切れ途切れにカレンの名前を呼ぶ。

「しっかりするのよ! シン!」

 消えないでくれ、と激しく肩を揺らして叫ぶ。

 自分の声が震えているのが分かる。いくら止めようとしても目からは涙があふれていく。

 シンに不安を与えてはいけないと笑顔を作ろうとするがうまくいかない。

 シンの体を埋め尽くすように広がっていく黒い星。

 侵食されている。この星が体を覆い尽くすと死んでしまうのが嫌でも理解できる。

「ごめんね、ねえちゃん。ボク失敗しちゃった」

 シンは抱えていた剣を抱き寄せた。

 なんて無茶なことをするんだと、こんな形になるなら二人で瓦礫に埋もれたほうがどれだけましだったろうか。

 シンの体は星に埋め尽くされ真っ黒になって塵となり消えた。

 カレンは大声を上げて泣いた。

 化け物もなにも気にはならなかった。