二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D.Gray-man -contrast- ( No.92 )
- 日時: 2011/04/29 16:28
- 名前: 蛍 ◆LU8WrcLlXI (ID: /ZfshGS3)
14———
いつの間にかカレンは氷に覆い尽くされた空間にいた。
目の前にはカレンの対アクマ武器である剣が氷の地面に突き刺さっていた。
シンを失った後カレンはこの剣に命じらるままに剣を振るいアクマを破壊した。
そして直後に現れたオーガン元帥に保護されエクソシストとなった。
オーガンの言葉が反芻する。
————— アイツらはおまえのイノセンスに引き寄せられて来たのだ —————
シンはイノセンスの適合者ではなかった。
カレンの手に渡るためにイノセンスは一度シンの手に渡ることを受け入れただけであった。
そしてイノセンスの力を感じ取ったアクマが村を襲った。
———だとしたらシンも父も村のみんなもわたしのせいで死んだようなもの……。
忌々しげに目の前の剣を睨みつける。
———こんなものが無ければ。
カレンは急激に破壊衝動に追われた。この忌々しい剣を——イノセンスをへし折ってやりたかった。
カレンは自らのイノセンスに手を掛ける。
これを破壊したら自分の心が壊れてしまうのがなんとなく分かった。
だがもう止められない。
カレンは腕に力をこめた。
————— ねえちゃん —————
シンの声を聞いた気がした。
フラッシュバックがカレンを襲う。
シンは消える直前に笑顔で何かを言った。すでに声にならなかったが。
———ずっと一緒にいる……。
口の動きを読み取った予想でしかないがシンはそう言った。確信的にそう思った。
———シンは……。あの時剣から響いた声あれはイノセンスのものではない。
記憶を思い返す。
あの時響いたのは姉を守りたいと言うシンの声だ。
———そうだ。シンは言ったんだ。わたしに生きて欲しいと。わたしに戦えと……。
カレンは腕の力を緩める。
目を瞑り精神を沈める。
気付くと元の空間に戻っていた目の前には雪女が立っている。
カレンの手にはあの剣が握られていた。
———シン。ずっと一緒にいてくれたんだね。
シンの気持ちはずっとカレンと共にある。そう思うと力がわいてくる。
カレンは剣を構えた。
———行くよ、シン!
カレンがイノセンスを発動させる。
そして構え、雪女を一閃で切り裂いた。
「ありがとう。あなたのおかげで大切なものを見つけられた」
カレンがそう言うと雪女は霧のように消えていった。
この雪女は人に怨みを持ち絶望の中この寂しい山で亡くなった霊だったのだろう。
イノセンスに他人にも苦痛を味あわせたいというこの怨霊が取り付いた——
———いや、イノセンスが怨霊に取り付いたのかもな。
山からは氷が溶け冷気が和らいでいた。