二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 〜恋雨録〜 ( No.11 )
日時: 2011/02/18 22:15
名前: うい ◆U2fwXad6qI (ID: VxqablIi)


『時雨散漫 side斎藤一』


俺は如何なるときも
己を捨てず 己の信念のため
誠の旗の下
ただ刀をにぎり
隊務を果たしてきた

あの方の期待に応えるため
そして
自分自身のために



しかし時が流れていることに
ふと、気がつくときがある
自分の変化と
刀を握り続ける意味が
昔と今とで変わったと実感したときだ


彼女の一生懸命な姿
可憐にそして儚く
俺が彼女を見る目が変わったからだろう



あれは雪の降る夜のことだ


「斎藤さん」

「雪村、どうした」

「原田さんがみかんをくださったんです。
よろしかったらお一ついかがですか?」

「ああ、もらおう」


たまたま部屋に戻ろうとしたとき
彼女に呼び止められた
なぜだか彼女の頬は赤く
みかんを受け取ったときに触れた手は
とても冷たかった


「……」

「どうかしましたか?」

「…冷えているな」

「ああ、手ですか。
ちょっと遊んでまして」


彼女は少し申し訳なさそうに笑う
遊んでいた?
この雪降る夜になにをして?


「あ!お時間ありますか?
よろしかったら斎藤さんにも見ていただきたいんです」


彼女は俺の返事も待たず
庭のほうへ駆けていった
俺も仕方なくついていく
外は寒く風も冷たい

彼女は井戸のそばでしゃがみこんでいた
彼女に近づき覗き込むと
小さなかまくらと雪だるまがそこにあった


「あまりに綺麗に積もっていたものですから
なんだか作りたくなってしまって」


照れたような
それでいて懐かしいものを見るような彼女の瞳は
少し寂しげにも思えた


「雪で遊ぶのは構わんが
何故夜なのだ。
こんなところに長い時間いては風邪を引くぞ」


俺は彼女の頬に手をやる
まるで雪のように冷えてしまっていた

すると彼女は驚いたように俺を見て
顔を真っ赤にする
冷えとは違う赤さだった


俺は自分のしたことに気づき手を引っ込める


「す、すまない」

「いえ、その……
びっくりしただけです」


俺たちの間に無言が続いた
しかしそれでも雪は降り続き
風も先ほどに比べて冷たくなってきた


「雪村、風邪を引くぞ。
中に入ろう」

「は、はい!
あ、私お茶入れてきますね」


彼女はそういうと走っていってしまった
そのときの俺は
自分がしたことに自分で驚いていた
普段は絶対あんなことをしないはずなのに
一体どうしたというのか

俺は部屋に戻り
彼女の茶を待った





−続く