二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 〜恋雨録〜 ( No.12 )
- 日時: 2011/02/19 15:05
- 名前: うい ◆U2fwXad6qI (ID: VxqablIi)
>>10
部屋に灯りをつけ
彼女を待つ
彼女の頬に触れた俺の手は
なんだか温かい気がした
「雪村……」
俺は自分の変化に薄々気づいていた
彼女を見る自分の目
いつのまにか彼女の気配ばかり感じ
彼女の身の危険ばかり気にしていた
これはなんなのか
俺には体験したことのない感覚で
しかし俺にも理解できるもので
「いつのまに
これほどまでに想っていたのか」
わからない
「失礼します」
雪村が茶を持って入ってきた
俺と目が合うと
ふっと笑顔を見せてくれた
「寒いから熱いうちに飲むといいですよ。
きっと体も温まります」
「ああ」
俺の視線は彼女を捉えて離さなかった
初めて会ったあの時と違い
俺には強く儚く可憐な少女に見えて仕方なかった
「どうぞ」
彼女の差し出す湯飲みからは
白い湯気が勢いよく出ており
その温かさが伝わってくる
「おみかんもいただきましたし
ちょうどいいですね」
そう言って笑う彼女の笑顔が
頭から離れようとしなかった
「雪村」
「はい?」
「もしこの世の中に俺を惑わすものがあるとするなら……」
もしこの世の中に
刀一筋で生きてきたこの俺を
心の奥から惑わすものがあるとするなら
それは
「あるとするなら
きっとそれは
お前だろうな」
「え?///」
彼女は目を丸くし
耳から首まで真っ赤にした
俺はそんな彼女を見て
愛しいと思った
素直に反応する彼女
そうさせている俺
今の愛らしい彼女の姿が
自分の発言のせいだと思うだけで
なぜだか嬉しくなった
「あ、あの…斎藤さん?」
「なんだ?」
「それは、えっと……」
目を泳がせ
困っているのだろう
もう
伝えてもいいだろうか
いずれわかること
それが早くなるか遅くなるか
ただそれだけの問題だ
「俺はあまり口がうまくない。
お前の望む言葉を言えるかは
定かではないが」
「俺はお前が愛おしいのだろうな」
自然とその言葉しか出なかった
顔も緩む
しかし目だけは彼女を見つめていた
彼女はまた顔を真っ赤にし
照れたように俺から視線をそらす
俺は彼女の手をとり続けた
「願い叶うならば
俺にお前を守らせてはくれまいか?
俺にお前の隣にいる資格を……」
そう願う俺に彼女は視線を合わせ
「私で、よろしいんですか?」
「お前でなければいけないのだ」
そう
俺は雪村でなければ
きっとこんな気持ちにならなかっただろう
だから……
「斎藤さんのお傍に
おいてください」
そう言って笑う彼女に
俺はすべてを捧げよう
守り抜いてみる
たとえ時代が動き
変化しようとも
−続く