二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン☆大好きな、君だから☆ ( No.101 )
- 日時: 2011/08/24 12:25
- 名前: みかん (ID: JJibcEj3)
第九話:高校生活一日目、終了。
「はー、楽しかった〜」
冬花は上着を洗濯かごに入れると、ボスン、と音を立ててベットに思い切りダイブした。まだピシッとシーツが張ってあったベットは、ふかふかでとても心地がよい。うっかりするとこのまま寝てしまいそうで、冬花は隣でちゃっちゃと化粧水やら何やらを出して肌にぺたぺたしている紅葉に「紅葉さんも楽しかった?」と声をかけた。「そこそこ」と返って来た素っ気ない返事に苦笑しながらも「相変わらず素直じゃないなあ」と言うと今度はうっさい!と近くにあったバッグを投げつけられる。
それが紅葉の照れ隠しの行動なのはもう分かっている事なので冬花はそれには文句を言わず、先にお風呂場へと向かった。
廊下を歩きながら思い出すのはつい一時間前まで一緒にいた守達との食事会の事だ。
寮を出発してからも出る前と変わらず紅葉にはなにかとからかわれ、円堂には天然技のオンパレードで赤面させられ…。
疲れた、と言えば疲れたのは事実だが、それよりも皆でお外に夕食を食べに行くことが楽しくてしょうがなかった。
男子寮の寮監さんは学校の七不思議に関わる人物だとかいう噂を早くも聞いたとか。
女子寮の秋と同室の南美さんは円堂にも引けを取らない天然でとっても可愛かったとか。
門限が早すぎだと思うとかそうでもないと思うとか…。
そんなたわいのない会話をたくさんして、皆でワイワイやれる事がどうしようもなく嬉しかった。たまに円堂の方を伺うとニコッと笑い返してくれるのがたまらなく幸せだった。
思い出すと自然と頬が緩んでしまって、冬花は慌ててにやけた顔を持っていたバスタオルで隠した。
*****
お風呂を終えて部屋に戻ると丁度紅葉と入れ違いになった。
そこの化粧水使っていいからパックしときなさいよと言われて言われるがままにパックをしてみる。そうして暫くその冷たい感触に気持ちいいと目を細めていると、ふとベッドの上に放り出したままになっていた携帯がメールを受信した事に気がついた。
「誰だろ…。こんな時間に…。お父さんかな」
気がつくともう時間は午後9時だ。消灯まではあと残り1時間。こんな時間にメールしてくる人は、冬花の中でお父さんしか思い当たらない。
首をかしげながらも携帯を操作して、
ー不意打ちに出された名前に、胸がドキンと跳ねた。
「メール一件受信…。
…守くん…?」
…今まで、こんな夜遅くに守からメールが来たことは一度もなかった。たとえそれが部の連絡メールだとしてもだ。そういうものでも円堂は次の日の朝にくれる。絶対に夜8時を回れば通話も切っていた。
彼はいつだってそうだった。
普段は天然ボケキャラで明るいムードメーカーでも、
守るべきことはきちんと守る。相手の気持ちを尊重して、わがまま言った事なんて一度もない。自分の都合で他人を振りまわすような人ではないから。
だから、たとえ「おやすみ」のメールがしたいのに来なくても。来ないのにしたくても。
冬花はそんな円堂が好きだからそれでいいと思っていた。その行動も冬花の迷惑を考えての行動である事が、それだけ円堂が冬花を大事にしてくれていると教えてくれるから。だから、その優しさで十分だった。
…だけど。
今日、そんな円堂から初めて夜8時を回ったメールが来た。消灯まであと残り1時間。そんな状況でのメールとくれば…。
「少しだけ期待、してもいいのかな…?」
冬花は再び携帯を操作して出てきた画面を見る。
そして最後の一言を見た時、一度だけフッと満面の笑みを見せると、返信のメールを打って、そのままベッドに横たわった。
*****
紅葉が帰ってくるともう冬花は寝ているようだった。
布団も何も掛けていないようなので仕方なく掛けてやろうとベッドに近づく。
ーと。
「何でパックしながら寝てんのよアンタは」
冬花の顔にはさっき自分が使えと言った化粧水の匂いがたしかにするパックが貼られたままだった。携帯の画面も開きっぱなしで、メール画面のまま。
「ったく…。これはプライベートでしょ?いくら同室のあたし相手でも見せて良いわけ?」
言いつつ布団を掛けて携帯は画面だけ戻してやろうとして…。
ーあ〜、なるほどそう言う事ですか…。
携帯はもう待ち受け画面に戻っていた。メール画面だと思い込んでいたのは、どうやら冬花が別の…。
机の上に置いてあるデジカメでその画面を撮り、後から携帯に取り込んだらしい。
何でそんな面倒なことをしてまで…、という疑問はすぐに解決された。
画面に映されているたった5文字の言葉を見れば。
紅葉も思わずフッと小さく笑みを漏らすと、あまり見入るのもどうかと思い、そのまま自分のプライベートスペースへ向かう。
「何だ、ちゃんと上手い事やってんじゃないの」
『こんばんは、冬っぺ。
こんな夜遅くにごめんな?迷惑だったろ。
だけどごめんな、オレどうしても一度やりたい事があって…。こんなの、オレのわがまま以外の何でもないのは分かっているんだけど、でもどうしても一度やっておきたくて、それで今日メールしました。
ほらオレって、自分で言うのも何だけどこんなんだから。少しくらい恋人らしい事しとかないと冬っぺも愛想尽きたくなっちゃうだろうし。
だけどそれでも、それが自分の勝手なわがままなのは百も承知だから。
だから今日だけ、今だけ、言わせてください。
…おやすみ、冬っぺ。良い夢を…。』