二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン☆大好きな、君だから☆ ( No.102 )
- 日時: 2011/08/24 13:09
- 名前: みかん (ID: JJibcEj3)
第十話:図書室。
ー入学式から数日たったある日の事。
新しいクラスにもだいぶなじんできた冬花は、休み時間に毎日図書室へ足を運ぶことが日課になっていた。
守が毎日そこにいるからだ。
どうやらお父さんに頼まれて調べ物を始めたらしい。お父さんが調べ物を他人に頼むなんて珍しい…。もし頼んだとしても今までは鬼道や豪炎寺相手、というのが常だったので少し不審に思わなくもないが、お父さんが守を頼りにしてくれているならそれは彼女としてとても微笑ましい事なので、冬花はそこには一切触れず、ただ毎日守の向かいの席に座ってその日の宿題を片付けていた。
何も言わなくても言われなくても、守と一緒にそこに居る。
冬花にとって、それはとても心地の良い時間だったから。
今日も授業が終わるとなるべく早足で向かったのだが、守の方が早かったようで、いつもの席に腰掛けて何やら分厚い本を読み、ノートに書き込んでいる。
「…守くんがあんな風に大人しく本読んでるなんて…、何か変なの」
冬花も呟きながらいつもの席へ向かった。
*****
「守くんが、あんな風に大人しく本を読むのって珍しいね」
その日の帰り道、思わずポロリと零してしまった本音に、冬花はアッと気づいて口を塞いだ。
「ご、ごめん。聞いちゃマズイ話しだった?」
「いや、いいよ別に。何を調べてるかは…監督が言わないのならオレからは言えないけど…。
ーま、あらかたサッカーの事だよ。じゃなきゃオレが毎日ああして図書室行くと思う?」
「あ、そっか。そうだよね。
サッカー以外の事で守くんがあんなに熱心になれる事なんて、この世に存在しないよね」
「お、ちょっと今のオレに対して失礼じゃない?冬っぺ。
オレが毎日図書室に行く理由としては、少なからず冬っぺが関わってるんですけど?」
言われて真っ赤になりながら「ありがと」と一言返した。
守と冬花は別のクラスだ。守がA組、冬花はF組。一年生だけでAからFまでの6クラスあって、雷門中出身6人組は全員別々、と綺麗に分けられてしまった。
寂しいかと聞かれれば、別にそれだけという訳でもない。
新しいクラスは皆ノリが良いし、一人教室の隅で小さくなっていた冬花にもすぐに何人かの女子が声をかけてくれ、気の合う友達も出来た。
秋の同室だと言う南美も同じクラスで、今はまだそれ程親しくはないが、いつか友達になれたらいいとも思う。
聞けば豪炎寺のいるC組は、皆何かと物静かで、まだチームワークの欠片も出来ておらずこれから出来るとも到底思えず、いつもワイワイやって賑やかだった雷門中の頃とは違いすぎてやりにくいと言っていた。
それに比べたら自分はものすごく恵まれた所に来たと感謝すべきだ。
…だがそれと守の事とは違った。
有名人な事を差し引いても、彼女からの贔屓目を差し引いても、守は明るく朗らかで話しやすいし、何より自分も天然なくせに面倒見が良い。
そんな守だから新しいクラスでも当然、早速モテ始めている訳で…。
それを考えても不安に駆られないかと聞かれれば、それは完全なる嘘だった。不安にならないわけがない。
だからせめて少しでもその不安を紛らわそうと図書室に通っていたのだが…、まさか守も同じだったとは思いもよらなくて、
冬花は、その思いもよらない不意打ちの事実がどうしようもなく嬉しくて一人ゆるゆると頬を緩めていた。