二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン☆大好きな、君だから☆ ( No.210 )
日時: 2012/06/15 22:44
名前: みかん (ID: eVCTiC43)

第十三話:あなたを信じます。
ー五月中旬。
守をあれだけ熱くさせ、冬花の守への気持ちにあれだけ大きく影を差した稲妻学園伝統、紅白対抗体育祭は台風の雨と強風であっけなく流されていった。勿論スポーツの名門校である学校側としては少しでも風が弱まったら深夜だろうが開催決定!…といきたかったらしいが、何せ今年初にして近年最大級の台風の到来である。各生徒たちの親がそれをおとなしく見守るはずもなく、「ウチの子に何かあったらどうしてくれるのよ、このスカポンタン!」ととんでもない死語を使いながらも各々我が子を全力で死守したらしい。
紅葉の(限りな〜く真実に近い)噂話の説明を受けながら、冬花はごろんとベットに寝転がった。
「は〜あ、何かもう嫌になっちゃうね。
体育祭準備期間来てからすぐ台風来ちゃうし、予定日の辺りまで来ても結局雨と強風のダブルパンチでムリだろうなあっていうのは分かり切ってたもん」
あれだけ「体育祭が守くん取ってちゃったー」的発言をしていたこの冬花でさえこの反応なのだ。
熱血体育おバカ且つ毎度行事を誰よりも楽しみにしていた守の今の様子が安易に想像でき、紅葉は思わずフッと笑みをこぼした。
手のかかる大きなちびっ子が同室者だと大変ね、鬼道君も…。
今の時間はきっと男子寮にいるであろうクラスメイトに同情しつつも、この体育祭で少しだけこじれてしまった冬花の恋のフォローも忘れない。
紅葉は冬花に一枚のメモを手渡した。
「ねえ、悪いけど水買って来てもらえないかしら?
私ここのところの低気圧で少し頭が痛いの。薬を飲みたいんだけど…」
そしてそんな簡単な嘘一つで動いてしまうのが冬花である。
「分かった、いいよ。そういうことならまかせといて」
置き上げるや否や部屋を飛び出した冬花の背後で紅葉が持っている携帯はメール作成画面。送る先は勿論今さっき部屋を飛び出した可愛い同室者の恋人さんへ。

『冬花が共同ロビーにいるけど、久々に何か話したりしたくないの?』
文面はたったそれだけの二言。
だけれどあの恋人バカを動かすにはこれで十分だろう。
冬花が戻ってきた時に怪しまれないよう、ベットにもぐり込んで携帯を閉じた。



*****
その頃冬花に共同ロビーで事件が起きていた。
「冬っぺ!」
思いがけずの守との再会である。かけよってきた守に思わず顔を逸らしてしまう。
「紅葉からメール貰ったんだけど…良かった会えたな」
久々の天使スマイルでそう言われるともう何も言えなくなる。冬花は顔を横へ逸らしたままこくんと頷いた。そんな冬花の反応は初めてなので案の定不審に感じたのだろう、守が首をかしげて尋ねる。
「…やっぱり、怒ってるよな…。
最近オレずっと体育祭の事ばっかで…。
まだしたことないけど、デートとかも…」
俯く守に、冬花は喉元まで出かかった言葉をぐっと飲み込んだ。
怒ってない訳ないでしょう、行事一つに振りまわされてそのくせこっちは全然構ってくれなくて。
見てくれないだけで不安だったのに、その上他の女の子とは笑いあってて。
こっち見てよ、馬鹿…。
本当はそう言ってやりたかったけど、ただでさえしゅんとしている守をこれ以上傷つけたくなくて。
「怒ってないよ、本当はちょっと不安だったけど。
…だからさ、水一本おごってよ。財布忘れちゃった」

ーねえ守くん。私信じていいんだよね、二人は今も同じ気持ちだって。同じくらい互いを想えてるって。

冬花は誰にも気づかれないくらいの小さな不安のつぼみをもぎ取った。