二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼——薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。 ( No.24 )
日時: 2011/02/28 18:26
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

008【束の間の幸せ】—ひかりside—


亜美が居なくなってから、新選組には以前までの土方さんの怒声が聞こえなくなったと思う。
前ならば沖田さんをつるんで一緒に土方さんの豊玉発句集を盗んでいたというのに……。
でも、亜美は戻ってくると言っていたしそう信じていようと思う。

池田屋事件の後、京の人々は前よりも新選組を恐れるようになった。
京の人々はどちらかと言えば長州派だからだろう。新選組は疎い存在——とは言わないものの、会津藩の差し金というイメージが強いのだろうか。

そんなある日、あたしは千鶴ちゃんと一緒に巡察へと出かけた。
その帰り、左之さんがどこかへあたし達を連れて行こうとする。平隊士は帰ったらしく……

「綺麗、……」
「明日は祇園会の後の祭りだ。今年の山鉾も見納めだな。大したもんだろ」

祇園会ギオンエの…祭り?
そういえばアニメとかで見た気がするけど、…いまいちわからない。

その後左之さんが新八っつぁんをからかっていた。
うん、面白い。

そう思っていると不意に左之さんがあたしの手を、新八っつぁんが千鶴ちゃんの手を、そして千鶴ちゃんはあたしのもう片方の手を握ってきた。
そのまま、三人で駆け出していく———……

きらきらと光る光に眩しさを覚えて目を瞑れば千鶴ちゃんが笑っている。

「綺麗だね」

その言葉にあたしは小さく頷いてみせた。



———亜美達 —風間side— 

祇園の山鉾を見に行きたいと駄々を捏ねている餓鬼、夜月亜美を仕方なしに連れてきたが、——夜月亜美の仲間とやらは既に亜美の事を忘れたのだろうか。
横を向けば変な紐—異国の言葉で“しゅしゅ”と言うらしい—で縛った黒髪が見える。

「………、満足したか」
「——————うん」

俺の問いかけに悲しげに答える亜美を溜息を吐きつつ見下ろす。
天霧や不知火は今日は来ては居ない。正直、餓鬼の相手をするなど億劫でしかなかった。

「…帰るぞ」
「っっうん」

自分で決めたのならば己の決めたことを貫き通せと言いたい所だが、餓鬼は其処まで心が成長していないと聞く。

「…………」

小さく繋がれた自分よりも小さな手を見て小さく溜息。

「貴様の手が冷たいのは元々か」
「ん、」

そう言った後に『手が冷たい人は心があったかいんだよ』なんて冗談を言う亜美に再び溜息を吐いて『冗談は顔だけにしろ』なんて呟いた。

「また、来ようね」

なんて最後に笑った亜美を見て、少し考えてやってもいいかなんて思ってしまった自分に呆れた。