二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼——薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。 ( No.33 )
- 日時: 2011/03/09 20:54
- 名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)
013【狂い咲く桜の如き鬼の姫】—亜美side—
——禁門の変から二日経った日。
うちは言わなきゃならない事がある、と皆を呼びだした。
勿論、山崎さんや島田さんだって居る。
「これから言う事は全て事実、です」
自分の改まった口調にどよめく皆を、土方さんが抑えた。
うちはただ、笑顔を取り繕い、——……
「亜美はね—……鬼、なんだって。
ひかは鬼と人間の間の子供なんだ」
亜美の突然の言葉に、ひかも皆も驚いたみたいだ。
「、亜美?」
「ひか、——黙ってて、ごめん」
これから、うちが語る事は悲しい真実で。
————うち等が居た平成より約400年前。
関ヶ原の戦いにより二つ—東と西—に分かれた鬼の事は知っているはずだ。
だけど、鬼にはまだ何人か生き残りが居た。
東にも西にも付かず、中立者として生きている鬼の一族が。
それが、夜月一族と空音一族なのだが——……
鈴鹿御前、奥州の鬼である悪路王の妻、のちに違う人物の妻と言われるのだが………。
そんな鈴鹿御前と同じ存在が、まだ居たのだ。
名前は——“天探女”。
これは鬼、というよりは天邪鬼の存在であり女神とも言われている。
そんな人物は、うち等の一族の祖先だと言われていた。
うちが今差している刀は“月影”という刀。これは別に天探女のものじゃない。夜月一族に伝わる名刀だ。
それと、ひかが持つべき刀は“日向”という刀。これも天探女のものじゃなく、空音一族に伝わる名刀である。
だけど、ひかの刀はとある事情でうちが隠してある。
うちは、……亜美はひかの記憶を戻したくないからだ。
「良く聞いて。……うち等は鬼という事は言ったでしょ?あのね、…うちはとある名家の血を引く。あの風間の血だ」
風間家と夜月家。それがうちの先祖らしい。つまり、うちの先祖さんとちー様の子供がうちのひい婆ちゃんらしい。鬼は長命だから。
「それでね、問題のひかは——……」
「ひかりちゃんは?」
沖田さんの声に一瞬躊躇するも、すぐに亜美は答えた。
「……斎藤と空音家」
『!!?』
全員が驚く。
そりゃ無理もない。あの斎藤さんとひかの先祖が恋人だなんて!!
「……ハーフ、というか混血なんだ」
「判ってる、けど……」
亜美の言葉に皆が言葉を失ったみたい。
——無理もない、か。
ふう、と溜息を吐いて居れば問題の斎藤さんが唖然としているのが見えた。
「、……俺の子孫という事か?」
「うん」
斎藤さんの問いかけに小さく頷き、亜美はどうするかなあと考えた。
禁門の変の数日前。
—風間side—
「——ひかに記憶を見せたくはないんだよ」
俺の話をすべて聞いた亜美が小さく呟いた。
刀を持つだけで記憶は蘇る。
何処までもお前は友達思いなのだな、と思わず感心してしまう。子供とは穢れ無きものだ。
「お前は全てを受け止める覚悟があると?」
挑発的な俺の言葉を聞いて、目の前の餓鬼はただ唇を噛み締める。
薄らと血が滲んできたが、口内に鉄の味が広がるだけで痛みは消え傷も消えたのが気に食わないのか苦い表情を浮かべた亜美を黙って見据える。
「あ、る」
か細く、それでいて弱弱しい声。
それでも目の前の餓鬼は、受け止められると嗤った。
「………ふん」
そんな餓鬼に、一つの刀を渡す。
「月影。——夜月家に伝わる家宝に近いものだ、絶対に無くしたりするな」
「、……」
やがて全ての記憶が戻ってきたのか、ただ亜美は呆然としている。
それを見て俺は、嘲るような笑みを浮かべたのだった。
( 狂い咲く桜の如き鬼の姫 )( 時代に、運命に逆らいそれでもなおお前は咲き続けるのか )