二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼——薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。 ( No.4 )
日時: 2011/02/21 19:04
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

001【初めまして異世界】—千鶴side—


今にして思えば、この夜の出会いこそが私の運命を大きく変えた瞬間だった。

「——はぁ、はぁっ」

逃げても逃げても後ろから追いかけてくる浪士であろう人達。
寒さと恐怖に震える体。
——だから、だったのかもしれない。すぐ傍に居る二人に気付かなかったのは。

「千鶴ちゃん、…?」
「——しっ!」

茶色の髪の子がぼそりと私の名を呼ぶ。慌てて唇に指を押し当て静かにしてと言った。
浪士達は私の姿をきょろきょろと探している。
物陰に隠れたは良いものの、この後の事を考えては居ない。ただ、あきらめて逃げていくのを待つだけだ。

「———っぐぁ!!!」

此方へと近づいてきた浪士が後ろを振り返った。仲間の浪士がやられたらしい。
ざしゅっという不快な音と悲鳴があがる。

「ひゃはははははははっ!!!!」

狂ったような笑い声がその場に響き渡る。

「っ羅刹、!?」

黒髪の子が焦ったような声でそう言った。
羅刹……何なんだろう、と思っていると白い髪に赤い目、どう考えても狂っているとしか言えない浅葱色の羽織を着た人達が此方へとゆらりと近づいてくる。
まるで、よく良い子で待っていたねとでも言うような視線。

「きゃあああああっ!!!」
「——っひ、」
「っっ」

悲鳴をあげたのは私、息を飲んだのは黒髪の子、何も言わないのは茶色の髪の子。
襲いかかってくるであろう痛みに目を閉じれば———痛みは来なかった。
同じ浅葱色の羽織の紫の髪の人に刺された人が倒れる。

「あーあ、残念だなあ。僕一人で始末しちゃうつもりだったのに。斎藤君、こんな時に限って仕事早いよね」
「俺は務めを果たすべく動いたまでだ」

後に続くように現れたのは、茶色の髪の男の人。

「新選組、……」

黒髪の子と茶色の髪の子が同時に呟く。
人斬り集団と恐れられているあの新選組?

「———」

何か言ってたような気がするけど、そのあとの記憶はない。
ただ、冷たい地面の感触だけは覚えている。