二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼——薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。 ( No.42 )
- 日時: 2011/03/23 17:00
- 名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)
- 参照: ばりばり更新するぜ!
018【新撰組と新選組—壱—】—ひかりside—
夜中、千鶴ちゃんが起き上がる気配がして思わず目を開ける。
——あぁ、そう言えばもうこんな時期か。
確か、山南さんが羅刹になる季節だよなあ……
ぼうっとしていると千鶴ちゃんに置いて行かれそうだったので、慌てて千鶴ちゃんが出て行った直後に寝巻のまま起き上がる。
そっと足音を消しつつ、千鶴ちゃんの後を追う。
亜美は、多分来ている——と思ってたけど来てないみたい。珍しい。
「ひ、ひかりちゃ——」
「しぃっ」
後ろから現れたあたしを見て千鶴ちゃんが声を上げそうになる。
慌てて口を塞ぎ、そっと部屋を覗くと——
らんらんと不気味に輝く、アカイロ。
「まさか君達に見つかるとはね」
「!」
ふと背後から聞きなれた声がして、思わず体を強張らせる。
山南さん本人が、そこに立っていた。
「予想もしていませんでしたよ、雪村君、空音君」
驚いた様に肩を竦める山南さん。
——絶対知ってたと思うんだけどな。
「山南さん……」
少し気まずそうな千鶴ちゃん。
あたしは真剣——否、少し睨んでいる。
「どうぞお入りなさい」
不審者に声をかけられたらすぐさま逃げるのが暗黙のルール!…なんだけど、ね。
こんな可愛い&か弱い千鶴ちゃんを置いてはいけない。
中に入れば、一番最初に視界に入るは変若水。
「これが気になりますか?」
あたし達の視線に気づいたのだろうか。
山南さんがそう尋ねてくる。
「それ、何ですか」
何か、千鶴ちゃんがめっさ怖い!
いやガチで!
「これは君の父親、綱道さんが幕府の密使を受けて作った薬です」
「え……!?」
山南さんの言葉に千鶴ちゃんが驚く。
無理も無い、今までこんな事一度も知らされては無かったのだから。
「元々は、西洋から渡来した物だそうですよ」
えりくさー?だっけ。
亜美が言ってた気が…つか、あいつ何処で情報を手に入れてくるんだ。
「人間に劇的な変化を齎す秘薬としてね」
危ないじゃん!
それ完全にやばいじゃん!麻薬か!?
「劇的な、変化……ですか」
「ええ。単純な表現をするのでしたら、主に筋肉と自己治癒力の増加でしょうか。しかし、それには致命的な欠陥がありました」
欠陥……
精神が崩壊するってのだよね、変若水の欠陥って。
「投薬された人間がどうなるか、……その姿は君もご覧になりました」
千鶴ちゃんがあっと驚くのが確認できた。
あの夜、——あそこで見た、白髪赤目の狂った男達。
その姿は殺人鬼と呼ぶのが相応しいと言える——……
それを思い出したのか。
千鶴ちゃんは口に手をあててかたかたと震えている。
「やめてっ!!」
思わず、そう叫ぶ。
山南さんが薬を服用したら?千鶴ちゃんに被害が及んでしまう。
「……薬を与えられた彼らは理性を失い、血に飢えた化け物となり下がりました」
「山南さん!!」
いくら叫んでも。
——山南さんは、淡々とした声音で言葉を紡ぐ。
「綱道さんは、新選組という実験場で、この薬の改良を行っていたのですよ」
「そんな……父様が人を壊すような実験を…」
ふ、と山南さんが眉を下げる。
「しかし残念ながら、彼は行方不明となり、薬の研究は中断されてしまいました」
———やめてやめてやめて。
千鶴ちゃんを困らせてんじゃねえよ眼鏡!
なぁんて、今のあたしには到底言えなかった。
其処へ何故か亜美が———亜美!?
「変若水よこせぇぇぇぇぇ!!!」
馬鹿が、馬鹿が此処にいる!!
だけど、——助かった。