二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼——薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。 ( No.43 )
- 日時: 2011/03/24 16:09
- 名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)
019【新選組と新撰組—弐—】—ひかりside—
亜美が空気をぶち壊して来てくれた。
——それだけでも、本当に少しだけ心強い(山南さんと三人っきりとかまじ死ぬ!!)
「……おやおや、この薬の正体を知って居ますか」
「初めっから知ってたけどね」
「亜美だもんね」
べえ、と舌を出す亜美にそう呟くあたし。
千鶴ちゃんはひたすらポカン、としている。
「——駄目だよ、山南さん。この薬は—っ…!」
そう、小さく叫ぶように言う。
山南さんはわかっている、という様子だがすぐにこう返してくる。
「これは私なりに改良を進めたものです……服用すれば、私の腕も治るかもしれません。———薬の調合さえ成功していればね」
「かもって……危険すぎます!こんなものに頼らなくたって山南さんは……!」
山南さんの言葉に千鶴ちゃんが必死で止めようとする。
「こんなものに頼らないと、私の腕は治らないんですよ!!私は最早、用済みとなった人間です!」
山南さんは、可哀相な人だ。
左腕の怪我の所為で、人生まで狂わされてしまうのだから。
そんな山南さんに、千鶴ちゃんが駆け寄って。
「そんな事ありません!皆も優しい山南さんの事が好きです!だから……!」
必死の千鶴ちゃんに、静かな声が降って来る。
「剣客として死に、ただ生きた屍になれと言うのであれば……、」
「山南さ——っ」
「人としても、死なせて下さい」
山南さんを遮り、亜美が山南さんの言葉を紡がせまいとする。が…
そう言った瞬間、変若水が入った小瓶の蓋が畳に落ちる。
「山南さんッ!!」
駆け寄る千鶴ちゃん。
——だけど、もう、遅すぎた。
山南さんが崩れ落ち、千鶴ちゃんが山南さんの名を呼ぶ。
「——ちっ、幹部を呼んできた方が早いんじゃ……!!」
「でも、千鶴ちゃんを一人にするわけには……!」
亜美とあたしで口論が始まる。
どうしよう———!
「大丈夫ですか……?」
そんな間にも千鶴ちゃんが山南さんへと近付いていく。
段々と山南さんの髪から色が抜け落ち、白髪へと変わって行く。
ぎらつくのは——赤い、瞳。
あの日、トリップしてきて初めての日に見た羅刹と山南さんは変わりなかった。
「危ないッ!!」
千鶴ちゃんを庇い、代わりに首を絞められる。
苦しくて、怖くて、——泣きそうになる。
「さ、…んな…ん、さんっ……!」
息が出来ず、言葉がとぎれとぎれになる。
ぎりぎりと締まる握力が有り得ないほどに強くて。
「!!ひかり、ちゃ……」
「千鶴!!今すぐに幹部の誰かを呼んできて!」
亜美の声が飛び、千鶴ちゃんが走りだすのが視界の端に見える。
——気を抜けば、気を失いかけるそんな苦痛に自分の顔が歪む。
くる、……しい……。
意識が、薄れかけたのは初めてだった。