二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

序章【狂気—南雲 奏—】 ( No.2 )
日時: 2011/02/23 19:07
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

「おねえちゃん、だいじょうぶだよ」

おまえが泣いた時は、俺も泣いた。

二人でわんわん泣いているとき、必ずおまえは涙を拭わず、俺の頭を不器用に撫でてそう泣き笑いを浮かべた。

花が好きで、花冠を貰ったこともある。

その割に蜂が嫌いで、よく逃げてたっけ。

そんなおまえが、俺は大好きだった。

姉として護らなければなどという使命感で溢れていた。

——だけど。


轟々と燃え盛る家に、俺は一人、おまえの身を案じていた。

だけど、疑問が頭を離れなかった。

何故おまえだけ助けようとしたのか。

俺も女鬼で、おまえと同じく愛されているんじゃないのか。



心のどこかではわかってたのかもしれない。

双子は縁起が悪い、兄や姉の方はどうせ妹弟を蹴落としてきたのだ、殺してしまえと雪村家で語り継がれてきたことを。

おまえと俺は、価値観が違ったのだと。

南雲家に引き取られてからは散々だった。

鬼は回復が早いからと虐げられ、ずっと生き地獄を味わっていた。

なのにおまえは、おまえだけは何で幸せに生きているんだ?

俺だけがどうして虐げられなければならないんだ?

沖田総司も、おまえに害のない発言をして俺を欺いたじゃないか。

原田左之助だって俺を見て動きを止め、まるで俺を殺すのを躊躇うような動きを見せた。

新選組の他の人間だって、どう考えてもおまえを可愛がっている発言をしたじゃないか!!

俺は前世で親友だったおまえを殺したいとは思わない。

寧ろ、愛おしく可愛らしい存在だと思っている。

なのに、おまえは前世の俺の事すら覚えていないじゃないか!!

こんなにも想ってるのに?


だから、余計に憎悪は止まらないんだ。

おまえの事を誰よりも知っているのは俺だ。

ずっとおまえの事を想っている。

可愛い可愛い妹。

おまえだけは——渡さない。



(少女の狂気を孕んだ瞳の奥に映っているのは双子の妹のみ)
              (着々と少女の躰を蝕む狂気と憎悪)