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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 【幼少期:壱】—南雲 奏— ( No.6 )
- 日時: 2011/02/24 17:58
- 名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)
この時はまだ、どうでも良かった。
彼女が、桜が前世の記憶を持っていようが居まいが、今傍に居れるという事だけで良かった。
何時も俺を励ましてくれる可愛い妹。
俺は、おまえが大好きになっていたよ。
「おねえちゃん、あげる!」
にこりと笑って花冠を差し出してくれる可愛い俺の妹。
「ありがとう、さくら」
俺も舌足らずな口調ではあるがそう返す。
おまえは、何時でも明るかった。(前世は多少ロリコンだったようだが)
——なぁ、おまえは【雪村千鶴】という立場で嬉しいか?
俺は、俺は【南雲薫】という立場で嬉しいよ。
こうして、おまえとまた笑いあえる日が来るなんて思ってもみなかったから。
「おねえちゃんのためだもん、いつでもあげるよ!」
「——だいすき、」
可愛らしい笑みを浮かべる妹の頭を撫でてやる。
この時は、周りの大人の蔑んだ視線も桜のお陰であまり気にしない事にできた。
—————世界が、家が、赤く染まるあの日までは。
幸せ、だったのかもしれない。
一緒に寝て一緒に起きて(否、おまえの方が起きるのは早かったな)、一緒に食べて一緒に遊び、一緒に学び一緒に風呂に入る。
それだけでも、幸せだったのだろう。
俺は、良い人間じゃないと理解していた。
血のつながった妹すら憎む、そんな人間だと。
だけど、俺はおまえの事が好きだというのは事実。
———だから許せはしなかったのさ。
「ずっと、いっしょにいてね」
俺の言葉に桜はぽかん、とした表情をした後に小さく笑みを浮かべて、
「あたりまえだよ!」
と頷いてくれた。
その時、俺の心は幸せで満たされていた。
この時はまだ知らなかったんだ。待ち受ける酷な運命も、壊れていく繋がりも。
だから、俺はのうのうと笑っていられたんだ。
【幼少期:壱—南雲 奏— / 薄れかけた記憶の欠片】
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