二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.12 )
日時: 2011/02/28 17:55
名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)




 繋がり繋がれ




 道は幾つも分かれるのに、巡り会う偶然は偶然であり、其れ以上でも其れ以下でもなかった。

「あ」「・・・あ」

 少しだけ遅れて私が音を紡ぐ。そいつは風船ガムを膨らましながら、振り向いた身体を元に直した。男が見ているのは死体だった。血は多くは流れていなかったが、其れの悲痛そうな顔が物語るのは恐ろしいものだった。

「お前が殺したアルか」
「・・・死んでねーよ、まだ」

 倒れこんだ男と、目の前の男を交互に見る。栗色の髪の男は、男性というより少年だ。手に持った刀にべっとりと付いた血は、其の優しげな表情とは全くそぐわない。そして、破れた黒の制服から見える細腕からは、真新しい紅色が滴っていた。

「・・・手ェ」
「・・・・・・ん、あぁ、へーきだよこんぐれぇ」

 ちっぽけな希望が湧き上がり、ズボンのポケットに手を突っ込んでみると、小奇麗に巻かれた小さな包帯に触れた。
 其れを手に取り、奴の目の前に翳してみる。
「・・・馬鹿チャイナぁ。包帯だけじゃあ・・・」
「いいから使え、!」
 私は其れを奴の顔面めがけてぶん投げた。其の男は「うぐっ」と抑えた声を上げて、少し解けた其れを受け取った。

「————どうも」
 無表情。だけど其の眼は、死体を見つめるような眼ではなかったので、私は少しだけ笑うことが出来た。


「お前、血の匂い、するヨ」
「・・・返り血は浴びねえようにしたんだけどな」
「服とかじゃなくて、今日のオマエ自身から、すっごい匂ってくるアル」
 軽蔑したように、聞こえたかな。だけども、其れが通常運転の腐れ縁。
「・・・別に、今日始まったことじゃあねえだろ」
 小さな呟きが流れた。やがて微風に溶けゆく其の声は。何処か悟ったような諦めたような、馬鹿な少年の声だった。


「・・・血の匂いは嫌いヨ」
「・・・俺も、好きじゃねえな」
「そう、なら良かったアル」


 殺されるのなら、血の匂いを全部揉み消して欲しい。殺すのなら、毒薬で静かに。
 僅かな痛みを胸に抱き、少年は歩く。其の血も、此の血も、掻き回して混ぜ合わせて流せたなら。たったひとつの悲しみさえ、小さな身体で分け合うことが出来るのだろうか。

 サド王子。お前と繋がるのなら、せめて天国で。首筋噛んで其の紅を全て飲み干して、伽藍堂のお前ならば、私は。