二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.13 )
- 日時: 2011/02/28 18:15
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
変わらないものがある。今も昔も。変わり続けるものがある。今も、昔も、莫迦みたいに。咲き続ける花がある。咲かない花もある。変わらない愛がある。其れは、今も、昔も。
失い続ける愛の果てに、何時も残っている何かがある。鈍く輝く鉛のように。重く苦しく時にせつなく此の胸に襲いかかる。手に入れた愛の中に、何時も馬鹿げた笑顔がある。其れはあの人のものなのか、其れとも。
アンダー・ザ・ローズ
広い屋敷は伽藍堂。歩む人々も、流れ込む小唄も、庭に佇む鮮やかな花さえ、水の音に溶けてしまいそうに儚く感じる。夢心地の雨音を聞きながら、不思議と懐かしく感じる、あの匂いを辿ってゆく。
「————随分と早いお帰りだ」
男は淡く掠れた声でわたしを誘う。優雅な音に溶け込むような、痺れそうな声を幾日かぶりに聞いたわたしは、少しだけ戸惑った。
「・・・・・・仕事の途中経過を伝えに来ただけだ」
「まだなんにもしてねえ癖に」
「五月蝿い。貴様の様な馬鹿と違って慎重なんだよ、わたしは」
「派手にやっちまうのが一番楽しいと思わねえか」
「・・・・・・、まあいい。———真選組の野郎共は存外に甘い。直ぐに潰してやるよ」
其れが、出来なくなる前に。心の内でそう思ったことが、奴にばれていないことを願う。其れもきっと無駄なこと。
「・・・クク、甘いのは手前だろお嬢さん。棗、もう手前には奴らを斬ることなど出来まい」
「何を。貴様は根拠の無いことばかりを、」
「根拠?そんなのは手前の眼の色だけじゃ足りねえか」
「・・・・・・」
此の男は人の弱いところを見つめることが好きだ。自分でも解る。わたしは、迷いはじめているのだ。
「・・・・・・貴様は、わたしが裏切ったら如何する」
甘い戯言だけが、わたしの心を蝕んでゆく。解っている。解っている、奴は甘いものを何より嫌う。
それなのに。
「たった一度だけ、手前を愛してやろう」
甘い囁きを弾き返された。わたしは眼を見開いた。
「何処かで聞いたような科白だな」
小さく呟いた。あの男も、そう言った。真選組局長、近藤勲。嗚呼、この男は、高杉は、何とも狡い。わたしは張り裂けそうなくらいに開いた眼をすっと細めた。
「俺ァお前みたいに真面目ぶった女は大ッ嫌いだ。だからお前に裏切られるのは悪くねえと思う。棗、情に溺れた惨めな女を愛してやろう」
「・・・・・・結構だ。わたしのような女を愛したって楽しくなど無い。わたしを女扱いするのは止めろと言った筈だ」
「ああ、悪ぃな。そういうところが好きだ」
「戯言にも程がある。いい加減にしろ」
わたしが軽く睨んでも、高杉は動じるどころか気付いていない。
「戯言か。悪くねえなあ」
返す言葉も無かった。
「高杉、答えてくれよ。わたしはどうすればいいんだ」
「・・・馬鹿じゃねえの。・・・・・・お前が裏切る?出来る筈ねえだろ」
わたしは少しだけ唖然としてしまった。
「・・・・・・有難う、高杉。礼を言う」
ぎこちなく微笑を作る。わたしの任務はひとつだけ。わたしの願いは、わたしの夢は、わたしの希望は。今も、昔も。
そして夜の街に、再び潜り込む。甘過ぎるほどに痛みを伴う密会だった。酷く無様で、色褪せて尚輝きを求める。蛾なんぞ可愛いものだ。狂おしい夢はまだ醒めず。もう少しだけ、光るものを求めていよう。