二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂/我が愛しのロクデナシ ( No.2 )
- 日時: 2011/02/26 11:42
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
鬼の子に明日を
この日の為に幕府の上の奴とも盃を交え、無様に馴れ合って、プライドさえ捨てた今日、今こそがわたしの晴れ舞台だ。
一番隊隊長、沖田総悟。奴の下につけたとは幸運。とっつぁんもあのゴリラも、わたしを信用しすぎではないか。何だか上手く行き過ぎて拍子抜けだが、気を抜くな、棗。恐ろしいのは副長の土方、そして沖田。舐めてかかってはならない。
「・・・・・というわけで真選組に新しい仲間が加わりまーす!はい、棗ちゃーん!」
わあ、と男共の歓声が上がる。
舐めているのはこやつ等のほうか。これしきで祝宴。まさに馬鹿の集まり。こんな奴らに世の中を任せなければいけない人々を哀れに思う。
「しかし近藤さん、こんなお嬢さんが真選組の一番隊ってのは、ちょっと心配でさァ。隊長の俺がしっかりしなきゃってことだろィ?」
はーん・・・上等だコラ、と口にしそうになったところを必死で抑える。これが普通の考え方だ。
「こんな女が真選組って時点で可笑しいんじゃねーのか?危険だと思わねぇか、近藤さん」
鬼の副長、土方。御尤もだ。だけどいつまでもそんな軽口叩いてると斬るぞ貴様。
「まあまあお前ら落ち着け。上の連中のご命令だ。それに棗ちゃんは信用できるようだぞ」
「はぁー・・・、あんたがこんなだから皆あーなんだよ」土方がくいっと親指で指した方角には、酒にはしゃぐ隊士達の姿。「まぁいい。ヤベーと感じたら斬りゃいーんだ。なァ総悟。・・・・・・」
沖田は泥酔。あの短い時間でここまでなるとは、変な話だ。というかこいつ未成年だろ。わたしもだが。
花の宴も盃もクソもあったもんじゃない。凄い勢いで皆酔いしれて、ちゃんと目を開けているのは、わたしと、土方ぐらいだった。
これでは隙だらけ。いっそここで時限爆弾でも仕掛けてやろうか。考えたが、やはり危険なので止めた。わたしは刻み煙草を詰めて、そっと一服した。
「・・・楽しそうだな、お前らは」
煙草のにおいがやけに美味かったので、わたしは一言だけ言葉を添えた。それを逃さず、隣にいる男は、
「馬鹿な奴らだろう」
呆れ笑いを含んだ優しい声を投げた。
このキセルは高杉の物だった。勝手に盗んできた。怒られるかと思ったが、何も言って来なかったことから、気付いてはいるが気にしてはいないのであろう。
ゆるゆると弧を描くように舞い上がる紫煙を、二人は目を細めて見つめた。
こんなわたしにも明日は来るのだ。見たこともないような綺麗な月が、夜の街を見下ろしていた。