二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.47 )
- 日時: 2011/03/27 13:08
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
Dear.the Dead
すっと差し伸ばされた綺麗な手のひらに、わたしは縋ることができなかった。
「・・・・・・ほら、立ちなチビ」
ぶっきらぼうな手はわたしを誘う。成す術なくわたしは其の手をとった。存外に温もりを感じて、心の奥底がじんわりと熱くなる。
「・・・良し、と。お前、名前は」
「・・・・・・・・・夏代、」
わたしは己の名を呟く。肉親に授かった名だ。
「夏代、吉原へ行こう。お前の生きる場所だ」
少年は言う。わたしは何を言われているのか解らなかった。そして、先ほどの男共の言葉を思い出す。もう一度少年の言葉を反芻し。
「・・・何、言ってるの?貴方、わたしを助けてくれたんじゃなかったの?吉原なんかにわたしを売り飛ばすの!?」
叫びにも似た怒りの声を少年にぶつけた。
「あーあー、五月蝿え餓鬼だ。あのさあお前な、其れがお前の運命よ。甘っちょろい考えは捨てろ。ちゃんとした着物着れて、立派なところに居座れて、飯食えりゃ充分だろうよ」
「そんな、嫌だよッ!・・・わたしのお父上もお母上も偉大な人なんだ!わたしは男の玩具になんかになる女じゃない!!」
「————嗚呼、そうかい。助けてやった俺が馬鹿だったね。所詮弱いだけの餓鬼か。自分の運命を受け入れ、気高く生きることさえできない」
気高く生きる。其れは、如何いうことか。思考を巡らせる。生まれ落ちた運命を憎まずに、誇りを忘れずに。あの人の言葉が虚空に浮かんでは消えてゆく。そしてもう一度浮かび上がったとき、消える前に掴み取った。
「・・・・・・待って」
知らず知らず、呟くように後姿を呼び止める。
「・・・助けてくださったこと、感謝してます。わたしを吉原へ連れて行ってください。お願いします」
わたしは膝をつき、そして地に頭をつけた。懇願など、情けない真似はするなと両親に言われていた。だけど彼らはもう、いない。全て失ったわたしには身分も何も、なかった。
「・・・・・・顔を上げなよ」
「————、」
「いい眼だね。其れに美人だ。安心しな、吉原には気高く美しい女ばかり集う」
少年は其の赤い瞳を細め口を開く。
「———俺は吉原桃源郷の守護者、名を椿と申す」
「・・・・・・宜しくお願いします、」
「椿と呼べ。さあ行こうか、女の園へ・・・」
吉原の守護者とは如何いうことだろう。小さな脳味噌を動かしながら、足取りを進める。常世の国への入り口が見えた。
「・・・嗚呼、そうだ。時期がきたら俺が逃がしてやるから」
「逃げる・・・?吉原から、?」
「うん。まあお前の言うとおり、吉原なんかで男と戯れる女じゃないだろう。何時の日か羽ばたかせてやる」
わたしはひとつ頷いた。そして椿の赤い瞳を見る。穢れなき紅だ。其れはあの銀色の男の紅と同じだった。