二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.49 )
日時: 2011/03/29 23:10
名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)






 手のひらに愛を唇に毒を




 ———なあしってるかたかすぎ。淡々と桂は俺に問うた。其方を向けば如何でもいいような顔をしたそいつと目が合う。桂という此の男は実は凄く電波だ。俺も銀時も久坂も入江も、ドン引きするほどイカれているのだ。突拍子もないことを口にされても俺は驚かない自信がある、今回は。そう思って耳を傾ければ、

「松陽先生が、戦に行くかもしれないって」

 と、そんなことを急に真面目になって言うものだ。

「・・・・・・ふうん」

 返答に迷い俺は適当に相槌を打つ。
 先生が此処を出たら、俺は、こいつは、そして。銀時は。そんな不安や、先生へのいろんな思いを含んだ「ふうん」だ。何も考えていないわけではなかった。
「其れでお前、そんな浮かねー顔してんの」
「・・・え、そうか?」
「うん。ぜんっぜん似合わねえよ。気色悪ぃ乙女みてえだ」
「其処まで言うか貴様。・・・俺はそんな、そんなこと」
「先生は俺たちのこと考えてくれてるから」
 俺は宥めるように言った。けれど何時までも餓鬼のままではいたくなかった。俺たちだって先生に楽させてやりたいし先生の笑顔を一番に願って日々送っているけれど如何しようもないことなんか世の中には星の数ほどある。
「・・・・・・松陽先生がいなくなったら銀時は如何するんだろうか」
「・・・アイツは、そうだな・・・ま、いんじゃねえの。飯くらいは俺がなんとかしてやるし」
「お坊ちゃまだからな。銀時は・・・まあ可哀想だと思うけど、高杉は?」
「は?」
「・・・・・・お前は如何思ってるんだ」
 なにが、と聞き返せば、先生が居なくなることについて、と返された。
「・・・別に俺は、」
 何を言うべきか。今日は上手く言葉が紡げない。黙っていると桂が浅く息を吐いた。

「————此れ、いるか?」

 と、そいつが懐から取り出したのは小さな飴玉だった。

「・・・・・・お前、相手間違ってんじゃねえか」
「え?」
「俺はそうゆうの別に好きじゃねえんだけど。あいつにやれば、」
「・・・今日、お前声が可笑しいぞ」
「・・・は、」
「喉が痛いんだろう」

 桂はそう言ってにこりと笑った。相変わらず綺麗に笑うなと思った。

「・・・・・・じゃ、そーゆうことにしといてやるよ」
 俺は控えめに手のひらを差し出し、飴玉を受け取る。銀時にやれば飛んで喜びそうな赤い苺の飴だった。
「・・・、」
「ありがとう」
 其の言葉を待っていたというように桂は目を輝かせてどういたしましてと返した。俺は馬鹿らしくて笑みを零す。


 ———なあたかすぎ、とまた淡々と声がした。なに、と奴の顔を見ると柔らかく笑みを放たれ、
「手を繋がないか」
 と、そう言い終える前に俺の手は奴の手にしっかりと握られていた。冷たい手が包まれる。先生の温度に良く似たぬくもりにぎこちなく触れて、俺は緊張も入り混じった安心感を覚えた。