二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.59 )
- 日時: 2011/04/10 13:00
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
罪は涙の味がする
桂と高杉が消えた暗闇の中を冷たい空気が漂っている。厠に行こうとしたところ、ふたりの布団が平べったかったので何処かに行ってしまったと悟った。せめてなんか詰めて盛り上がらせるとかカモフラしとけよ、と俺は溜息とともに背筋が震えるのを抑えた。江戸ってこえーよ何か幽霊的なものが・・・いやいや。
闇はゆっくりと四肢に絡みつく。凍てつくような夜。月の光。孤独。先生のいなくなった世界からは限りなく色が抜け落ちて、全てが抜け殻になった。俺の世界も、色を失くした。
俺も連れて行って欲しいと月を眺めつつ思う。其処に行けば、先生は俺を酷く叱るだろう。泣くかもしれない。先生が泣くくらいなら、独りでいるほうがよっぽどましだった。もう俺は泣くことすら、
————空が少しずつ明るんでゆく。其の薄明かりに溶けてしまいそうな俺の身体。先生、先生。俺は声に出さずに愛しい人の名を呼んだ。そして、ヅラ、高杉、と仲間の名を呼んだ。許されない行為だ。俺にそんな資格はない、ないのに。俺には居場所があるのだ。そんなものいらなかったのに。そんなもの望んではいけなかったのに。今、俺に纏わりつく温もりがある。其れをひとつ失くしただけでこんなにも絶望に満たされる。
許されない、のに。其れを許してくれた人がいる、仲間がいる。
ただただ泣きたかった。でも、其れは出来なかった。
江戸に来てから全てが怖くて全てが憎い。何もかも消えてしまえばいい。そうすれば俺は死ねるから。なあ、ヅラ、高杉。
「銀時」
弾かれたように顔を上げれば、其処にはなんでもないように桂と高杉が立っていた。
「・・・ちょ、おめーら・・・ッ!」
「銀時。水を持ってきてくれ。此れじゃあ寝ることも出来やしねえ」
恐ろしいほど真面目な顔で高杉が言った。
「高杉・・・お前・・・・・・」
絞り出した声は、多分先生が死んだ時よりも掠れていた。だって分かってしまったんだ。俺はずっと望んでいた最低なものを手に入れ、俺達はかけがえのない何かをまた失ったのだ、と。
「銀時、布と着替えも頼む。早く寝たいんだ。———結構恐ろしいものだった」
うん、と高杉が素直に賛同した。
「馬鹿!!!ほんと・・・・・・馬鹿じゃねえの!!?この、チビ、ヅラ!!」
力任せに、初めて生き物を斬った友人を抱きしめる。
「なんで、来たんだよ!!・・・・・・俺のいるところなんかに!」
「ああ」
「お前らは、そんな血生臭いところとは無縁なんじゃなかったのかよ・・・・・・!なんで、なんで」
「うん」
「・・・・・・なんで、俺なんかの場所に来てくれたんだよ・・・・・・っ!!!」
気がつけば、号泣していた。自分を受け入れた友人が、此れからも一緒に。嗚呼!
「・・・・・・銀時、俺ァ、怖かった。肉を斬るってこんなに怖いことだったんだな」
「俺も怖かった。・・・ずっと、お前一人にこんなことを押し付けていた。ごめん」
「ごめん、銀時!怖かった、あいつがあいつの剣が俺達に当たったらって頭真っ白になった!!」
「生き返るんじゃないかって、本当に怖かった!!」
「いつか俺達もああなるんじゃないかって、怖かった!!!」
其の日、俺たちは先生が死んでから初めて三人で泣いた。