二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.61 )
- 日時: 2011/04/13 21:26
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
罪深きイノセントローズ
忌まわしい朝のきれいな光に俺は重い目蓋を開けた。嗚呼、姉上はもう帰ったのかと溶けかけの脳味噌が動き出す。熱の冷めた体の表面から心臓の真ん中まで、冷たさが染み渡ってゆく。
すす、と静かな音で戸は開け放たれて、其処から今見たくない顔ナンバーワンの男の姿を見た。
「総悟いつまで寝てんだ。行くぞ」
「・・・・・・」
俺は返事を躊躇った。まあ其れも、何時ものことだった。
「おい、」
「・・・へいへい」
ひとつ微笑みを残して俺は布団を捲って起き上がる。欠伸を堪えると瞳が潤んだ。
姉上と此の男は、何を話していたのだろう。彼女が此処へ来る度に考えるが、考えるほどに厭になって全て放棄してしまう。
「総悟、今日はやけに動きが鈍いぞ?」
近藤さんは俺に不安そうな面持ちで問いかけた。
「夜更かししてたもんで」
嘘。昨夜は随分と早く眠りについた。俺は夜が嫌いだ。だから眼を閉じる。そうすれば何時の間にか闇は夢の世界に変わってゆくのだ。
「・・・ミツバ殿が帰ってしまって残念だ」
「ああ、」
慰めのように言うが、呆れ交じりの返答を何時も返した。本当のことを言われるのは嫌いだ。
「トシも何処か上の空だ、心なしか道場全体がどんよりとした感じだな。ミツバ殿は優しくて華のある女子だからか・・・寂しいな」
「・・・・・・土方さんは女性に興味があるんですか」
「ハハっ、総悟。男なら女を好きになることは当然だろう?お前にはまだ早いか」
「・・・早くないですよ」
早くない。でも俺は姉上を姉上として愛していただけで、女としてみたことは一度もなかった。
「土方さんが姉上を好きだったら如何しよう」
近藤さんに聞こえないように呟いた。そして、胸が苦しくなって溜息を吐いた。
「土方さんは今日、ちょっとお疲れでさァ」
「ああ?」
土方は睨むように小さな俺を見下ろした。
「全然練習になってやせんでしたよ」
「余計なお世話。あと、手前もだろ餓鬼」
「餓鬼餓鬼って其れこそ余計なお世話でさァ、自分だって女に想いを馳せる青い餓鬼の癖して」
「・・・は、?」
俺の自分でも厭だと感じる言い草に男は盛大に眉間の皺を深めた。
「女ってなんだ」
「姉上」
「・・・・・・馬鹿じゃねえの、シスコン野郎」
「好きなら姉上の想いに答えてやればいいのに、嘘ばかり吐いて捨てた振りをする。其れは優しさでさァ。最も醜い、優しさ」
「お前人の話聞けよ。誰があいつのこと好きだって———」
「おまえだよ」
酷く冷たい声。其れが自分の喉から出されたものだと知ったのは数秒後のこと。
「俺はあんたが嫌いなんだよ、あんたは俺から全てを奪ってくから」
「——俺が何を奪った」
「・・・・・・なんでしょうね」
俺は貴方のことだって本当は好きなんだ、と、そう言える日が来るのか。何時も剣のことばかり見てるような素振りで、本当は自分のやりたいことなんて殆ど考えちゃいない。否、やつの大事なものは剣なんかではなく、仲間だ。
奴は、土方は俺のことさえ愛してくれているだろう。其れが俺は気に食わない。奪うのなら、全部奪っていけばいいのに、俺だけ此処に置き去りにする此の男が、俺は嫌いだ。嫌いな男の背中ばかりを追いかけて、俺は生きてきた。