二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 銀魂/我が愛しのロクデナシ ( No.7 )
- 日時: 2011/02/26 16:59
- 名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)
それは私の夢 それは空色の夢
二日酔いも程々に、てっぺんまで昇った太陽はじんわりと暖かい。
日曜だというのに今日も民の為、命を懸けて江戸を護らなければならない。当然だが、昨日の宴と今とでは皆態度ががらりと違って、流石だと思った。
ぼんやりと助手席に座り、開け放った窓の外を見つめる。過ぎてゆく景色の中、人々は鮮やかな笑顔を見せた。
隣に座る男は、真選組の頂点だ。濁りの無い眼つきは、鋭く、それでもどこか親近感や田舎っぽさを感じる。一言二言声を交えただけでも、彼が誰もに信頼されているということが解った。
「なあ、棗」
「はい」
「血は怖いか。人を斬ることは、怖いか」
真っ直ぐ、どこか未来でも見つめるような眼差しで、近藤はわたしに問うた。
「・・・血は怖い。人を斬ることは・・・・・・怖い」
わたしは本心を言った。馬鹿にされても構わないと思った。この男になら。
「そうだろう。・・・いや、そんな心配するな。女だからと、お前を見くびったわけではない」
「・・・・・・」
「皆、怖いよ。人を殺すことも、殺されることも。俺だって嫌さ。———棗、お前は俺達の仲間だ。だから、」
「あんた達を、裏切るなと?」
「・・・・・・ったく、いがみ合うつもりはないんだ。ただ、お前は死んでくれるなよ」
「————」
困ったように近藤は笑う。その笑顔の裏に何を思い浮かべているのか、わたしには解ってしまった。仲間を斬ることほど怖いものはない。伊東という男は、仲間を知ったと共にこの世から消えた。
「あんた、馬鹿だな。頂点というのは屍の上でさえ立っていなければならないのに」
「ははっ、よく言われる科白だ」
こんな会話で、心を揺さぶられたわけではない。だけど、わたしがもし高杉を裏切ったら、あいつはどんな顔をするのだろうか。
そして近藤を、真選組を裏切ったとき、わたしは、澄んだ心でいられるのだろうか。わたしの愛を貫く為に、ちっぽけな復讐の為に。わたしは人を殺められるのだろうか。
「局長、あんたはもう少し警戒した方がいい」
「・・・・?」
「わたしがあんたの仲間を殺したりしても、ちゃんと立ってられるのか」
「———もしお前が裏切ったら、俺はお前を一度だけ抱いてから葬りたいね」
「・・・・・・それもまた、十全だ」
二人はクツクツと笑みを漏らした。成程、ストーカーと噂される男でさえ、こんなに美しいものか。
そしてその箱から出た時、やけに眩い空の色にくらりと眩暈を覚えた。
どうしてだろう。何故だか、どいつもこいつもいろんな色で輝いている。ひとり鈍い色を発する己の魂よ。どうしようもない汚れた魂よ。この水色の空に溶けてゆけ。