二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂/我が愛しのロクデナシ ( No.8 )
日時: 2011/02/26 19:50
名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)





 蝶よ花よと弄ぶ




 わたしが来てから、屯所にはより一層煙草のにおいが染み付いたと皆口をそろえて言う。だが誰もそれを嫌がるような素振りは見せず、浮かび上がる紫煙の中で呼吸を繰り返した。

 煙草は煙草でも、わたしはキセルで吸うほうが好きだ。本来の煙草の味を楽しめ、品があるように感じる。土方にも勧めてみたが、面倒なもんは嫌いだとあっさりと斬られた。
 キセルの使い方は高杉のを見て覚えた。恐る恐る吸ってみたのはまだ今以上にガキの頃だった。それほど美味いわけではなかった。ただ、吸っていると落ち着く味がした。


「あぁ・・・どうも」
 縁側に座っていると、後方に人の気配を感じた。振り向くと副長の土方の姿があった。
「一服していくか?」
微笑を忘れず問いかけてみる。
「ああ・・・そうしてーが、煙草が切れちまった」
「・・・貸すけど?」
「んー・・・、」
 男は暫し考え、「使い方わかんねーし」と右手をヒラヒラと振った。
「いいよ、はい」
 すぐに吸えるようにしてやれば、土方は
「サンキュ」と無表情でキセルを受け取る。そしてわたしの隣に座り、それをゆっくりと吸って、ゆるゆると吐いた。
 意外と様になるんだなあと感心していれば、キセルを返され、じゃあ俺行くからと、あっという間に仕事に戻っていった。忙しない奴だ。もう少し見ていたかったのに。


 今日は仕事が入っていないので、制服ではなく私服の着物を着ている。こうやっていると、自分が本当にお嬢様みたいで気持ちが悪かった。鬼兵隊の中では、如何装っていようと紅一点は来島であり、自分はのびのびと女を捨てていられる。ここに居れば、己の性別を余計に厭ってしまう。
 見せ物じゃないんだ、とわたしは思う。其れ以前にわたしは敵なのだった。男も女も無いだろうに。


 部屋をのろのろと歩く黒猫を見つけた。先日近藤が拾ってきたのだという。何を考えているのやら。そっとわたしの膝に乗ったそいつは綺麗な丸まって眠りについてしまった。
「おっ、すごいや。誰にも懐かない猫なのに」
 横を通りかかった山崎が声を上げた。
「やっぱり、女の人だから安心するのかな」
 ・・・ですってよ、黒猫さん。またわたしをはみ出し物みたいに扱うのか、と男を軽く睨んだが、ただ笑っているだけの阿呆には効かなかった。

 女だから安心する?冗談じゃない。
 安心なんかしてくれるな。わたしに殺されたいのだろうか。そう思ったところで、わたしは、自分が真選組に未練を作り始めていることに気付いた。

 離れられなくなってしまえば、わたしの負けだ。

 高杉、如何したらわたしは幸せになれるのか。まだ一週間と経っていないというのに、もう貴様の声を求めている。其れが悔しくて、わたしは結った髪を荒く解いた。