二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.116 )
日時: 2011/04/14 20:27
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第10話 紅桜ってさ、ある意味怖い桜だよね。だって赤いもん。


 凜は静かに天井を見上げていた。
 ゆらりと手を上に伸ばしても、そこにある天井は掴めず空を掴むだけだった。
 すると、そんな空間の中に翔が飛び込んできた。全速力で走って来た為か、息遣いが荒く汗が滲んでいる。

「あら。どうしたのかしら、そんなに急いで」

 凜の気だるげな瞳が、翔に向けられる。
 翔は凜の前に詰め寄り、バンと目の前のデスクを叩いて乱暴に言葉を吐いた。

「辻斬りの情報を渡せ。奴を狩る!」

 その言葉を聞いた凜は、にっこりと笑う。

「いいのかしら、死神は簡単に人の魂を狩ってはダメなんでしょう?」

「どうでもいい。仲間がやられた、怜悟が今にも死んじまいそうなんだ」

 ガッと凜の胸倉を掴み、翔はもう1度だけ凜に言う。

「辻斬りの情報を渡せ。主犯者を狩る」


***** ***** *****

 万事屋銀ちゃんに戻った翔は、ソファに座り込み大きなため息をつく。
 事態が大きくそして急すぎて収集がつかなくなりつつある。こめかみを押さえ、ゆっくりと瞬きをした。
 翔が帰って来た事に気付いたのか、孫市が反対側のソファに座る。

「どこに行っていた? 報告をすると、希実に傷を回復してもらい、今は眠っているぞ」

 孫市が怜悟の方に視線を投げる。
 布団に寝かされた怜悟は、規則正しい呼吸を繰り返し眠っている。ザックリ切られた肩の傷は、完全に癒えていた。

「辻斬りの情報を聞いていた。……許せない、絶対に狩ってやる」

 翔は舌打ちをして、今にも砕けそうなぐらいに震えている拳を机に叩きつけた。

「落ちつけ。お前らしくないぞ。俺様で自己中だが、冷静でどんな状況でも対応出来る————それが死神である、東翔の姿だろう?」

「この状況で落ちついてられるかよ!! 絶対に許したくない、あと1歩で死ぬところだったんだ!!」

 ソファから立ち上がり、翔は叫んだ。
 静かに、冷静に、落ちついて翔を見上げる孫市は、小さなため息をついた。

「それで。その辻斬りとやらの情報はどんななんだ」

 怒号が聞こえてきたのか、元就が翔に問いかけた。
 翔は深呼吸をしてソファに座り直し、凜に聞いてきた辻斬りの情報を説明する。

「相手は強い人を探している。会った奴は全員、斬られて終わるって話だ。ただ、その刀が、生き物のように動く刀身の赤い刀だったというらしいが」

「赤い刀? ならば、貴様の鎌も赤くないか?」

「残念だが、俺は柄だけだ。刃の方は銀色——鋼色と言った方がいいか? まぁ、問題はそいつが夜に出るって話だけどな」


 そして夜になる。空が真っ暗になり、星がちりばめられていた。

「へぇ、怜悟が襲われたんだー。ふーん」

 翔から話を聞いた雫は、さも興味無さそうに答えた。
 一応経緯を雫に話しておいた翔は、そんな反応を返されて殴りたくなったがとりあえず我慢しておいた。

「まぁ興味はないけど。辻斬りは許せないね、うちも協力するよ」

「助かる。お前は馬鹿だけど、戦力にはなるからな」

「それってさ、褒めてるの貶してるのどっちなの?」

 笑顔で銃を翔の額に突き付ける雫。
 翔は銃を振り払い、目の前に置かれていた水を飲み干した。

「辻斬りは、本当に許せない」

「ホント、翔ちゃんは仲間を大切にするね。死神なのに、人には干渉しちゃいけないんじゃないの?」

 雫は片手で銃を弄びながら、翔に訊いた。

「許せないもんは許せない。斬ったから斬り返す、それが常識!」

「いや、常識じゃないでしょー」

 雫は銃をホルスターに戻し、大きく伸びをして椅子から立ちあがった。
 翔も雫の背中を追いかけて椅子から立ち上がる。
 空は暗く、そして月がぽっかりと浮かび星が見えていた。

「……今日も起こるかなー」

「何が?」

 雫のつぶやきに、翔は首を傾げた。

「んー、独りごと。それより、パトロールみたいなの、行ったら?」

 その時だ。
 遠くで、鶴姫の悲鳴が聞こえたような気がした。