二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア-銀魂×戦国BASARA-質問大会中 ( No.128 )
日時: 2011/04/20 18:44
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

 気付いていた。自分の寿命がもうないって事なんて。
 でも、どうしても会いたくないんだよ。あいつには、どうしても。
 だって、あいつは————


第11話 動物は最後まで大切にしてあげなさい。


 公園にて。
 翔はドーム状の遊具の中から外の様子をうかがい、舌打ちをする。

「まずいな。あちこち猫だらけだ」

 ズルズルと壁伝いに地面に座り込み、翔はため息を漏らす。
 星喰はすぐそこでへばっている。ぜぇぜぇと肩で息をして、ゲージを覗いた。
 ゲージには蝋燭が5本燃えている。

「まずいな、さっきの技を使ったから蝋燭が5本になっちまった。残り5本で地球を征服しなきゃ」

 真面目に言っとるのかお前は。
 翔は再度ため息をつき、呆れたような表情を浮かべる。
 すると、軽快な声が響いてきた。

「しょーちゃん。何楽しそうな事をしてるのさ、かくれんぼなら入れてちょ☆」

「うぜぇ」

 昴の笑顔を冷徹な言葉で一蹴し、翔はそっぽを向いた。

「何でさー、何でさー。楽しそうな事をしてるなら俺も混ぜる、これ常識よ?」

「そんな常識、俺には通用しない」

「またまた。そんな事を言って♪ 常識よ常識。真選組では常識♪」

「消えろ雑魚が」

 翔は昴を蹴りだし、外を確認する。
 相も変わらず猫の集団が星喰を探してうろつき回っている。思わず舌打ちをした。

「何を探してるんだかね、あの猫達は」

 蹴りだされてもなお、しつこく入ってこようとする昴はぽつりと言葉を漏らす。
 翔はもう蹴りだす事が面倒になってきて、昴を放っておく事にした。

「副隊長、猫の軍勢がいます。排除しますか?」

「おう副隊長、偉い信頼されてるじゃねぇか」

 希実の言葉を聞いて、翔は昴を冷やかす。
 昴は嘲笑を浮かべる翔を睨みつけ、希実に「そんな事はしなくていいから」と言った。
 命令なので仕方がないと思ったのか、希実は黙り込んだ。
 すると、外から春夜が「あ、」という声を漏らした。

「何事だ?」

 昴が穴から這い出て、外に居る春夜に訊く。
 春夜は公園の奥を指して、首を傾げる。

「死にかけの爺さんでさァ」

「本当だ」

 死にかけの爺さんが、綱を持ってズルズルと足を引きずり歩いている。
 その爺さんを見た瞬間、星喰は顔をしかめた。

「爺さん……」

 苦しそうに呻き、星喰は舌打ちをする。
 翔は星喰を見下ろし、静かな声で問いかけた。

「行かないのか?」

 星喰は黙りこむ。何も答えず、ただ下を向き続けていた。
 そんな星喰を見て、翔は小さく舌打ちをする。そして穴から這い出て、猫達に言う。

「星喰は俺が預かったー。返してほしくば俺を殺せー」

 棒読みで、両手を大袈裟に広げながら翔は言う。
 一斉に猫達の視線が翔へ集まり、そして攻撃を仕掛けてきた。

「翔! 何をしているアルか、そんな事をして——」

「くたばれって言ってこいよ」

 猫達をまとめて相手しつつ、翔は星喰に言う。
 沢山の敵に囲まれ、攻撃をされていても翔は笑っていた。笑いながら、こう言っていた。
 「爺さんの所で死んでこい」と。

「でも俺h「行って来いヨ!」ぶべぇぇぇ?!」

 神楽は星喰を爺さんに向かって投げ飛ばし、自分も猫達の戦いに参戦する。
 1匹、また1匹と猫を丁寧にふっ飛ばしながら、地面でよろよろになっている星喰に言った。

「くたばれって、言って来いヨ!」

「て、てめぇぇぇ!!」

 投げられた星喰は、そこで歩いていた仮死状態の爺さんにぶち当たり、蝋燭が2本ぐらい折れた。
 苦しそうに呻き、フラフラと爺さんを見上げる。
 自分も死にそうなくせして、まだ立ち上がる爺さん。蝋燭の炎は一気に燃え上がっていた。

(くたばれよ……ッ!)

 爺さんの持っている綱を口にくわえ、星喰も立ち上がる。
 後ろでは猫の集団と闘っている神楽と翔と昴達が見えた。彼らが相手をしてくれているから、今こうして自分は生きているのだろう。
 自由の利かない足を無理矢理動かし、星喰は思う。「くたばれ」と。

(何で、何で倒れないんだよ……ッ!)

 何度も転び、そして立ち上がる2人。
 必死になって歩いて、それで何が得られるのだろうか。
 何も得やしない。だが、彼らにとっては自分が相手より先に死ぬ訳にはいかないらしいのだ。
 星喰は必死に思う。

(くたばり、やがれぇぇぇ!!)

 その時だ。後ろで重い何かが倒れる音を。
 振り向いてみると、爺さんが先に倒れていた。星喰もその後を追うように、静かに倒れる。

「金太郎、よ。お、俺の勝ちだぜ……。お前は、ダチ公を泣かせたんだからな……!」

 もうすでに聞こえていない星喰に、爺さんは最後の言葉を言った。





「星喰と、その飼い主。名前は——と、どうでもいいか」

 夜空に星がいくつも輝き、翔はスッと炎神を空に突き刺すように持ち上げた。
 2つの淡い魂が空へ昇って行く。
 それらを見送った後で、悲しそうな顔を浮かべた。

「儚ぇモンだな、人間ってのは」

 死神の役目を終えた翔は、その場に炎を残して闇へと消えた。
 道端には、綺麗な花束が置かれていた。